「農民」記事データベース20070827-793-01

豊かな水と緑あふれる木曽町へ

21世紀に輝く町づくりを

長野・木曽町


 全農研大会で熱く語る

    田 中 勝 已 町長

〈プロフィル〉 一九三七年生まれ。木曽山林高校卒業。青年団活動を経て、一九六七年から日本共産党の町議会議員として八期務め、一九九八年に無所属で木曽福島町長に初当選。二〇〇五年には四町村合併で誕生した木曽町長に当選。


 長野県木曽町の田中勝已町長が、全国農業教育研究会第三十七回大会(八月三日)で「豊かな水と緑あふれる町づくり〜環境の時代にいきる地域(町)づくり、人づくり」と題して講演しました。その一部を紹介します。


誰かがやるのでなくみんなが
町をつくろうという気持ちで

 「木曽路はすべて山の中にある」―島崎藤村の「夜明け前」で知られる木曽町。田中町長は「市場主義やグローバリズムが吹き荒れる時代では、農山村は衰退を余儀なくされ、時代の落伍(らくご)者として捨てられようとしている。しかし、こんな時代がずっと続くわけがない。必ず農山村や伝統・文化が必要になり、全国民的な運動として農山村のローカルな文化を再評価する時期が来るのではないか」と熱く語りはじめました。

 画期的なまちづくり条例
 住民が町の施策に意見し計画も策定

 田中町長のすすめる地域づくりの第一は、全国的にも画期的な「木曽町まちづくり条例」です。この条例の柱は、徹底した情報公開と住民が主役の参加型。独自の自治の仕組みである「地域自治組織」を明記したことです。これは、合併前の四町村(木曽福島・日義・開田・三岳)ごとに地域住民で設置し、行政の下請けではなく、町長の諮問に意見を述べ、町の施策に提案・勧告し、「地域まちづくり計画」を策定します。行政は、財政と人的支援を行います。「誰かがやってくれるのではなく、みんなが町をつくっていこうという気持ちにならないとできない。このことを、ずーっと言い続けてきた」田中町長は、「町長や議会の権限をできるだけ小さくし、住民の権限をできるだけ大きくしていくことが二十一世紀に輝く町づくりにつながる」と訴えました。

 木曽学研究=山村復権運動
 木曽学び伝統文化の保存、地場産業発展

 第二は、「木曽学研究所」を設立したことです。木曽学とは山村復権運動。「まだ若かったころ、青年団活動に明け暮れ、農業と林業、山村問題を勉強した。農村を豊かにしようと思ったら、社会の仕組みや政治の壁に突き当たった」という田中町長は、若いころから木曽学を生涯の自らの課題にしたいと思うようになりました。そしていま、シンポジウムや講座をひらき木曽を知り学びながら、伝統文化の保存発掘、衰退した漆器や木工業の発展継承、旧中仙道文化と結合した観光など、さまざまな運動が広がっています。

 水づくりは森づくり
 木曽川下流域の自治体と水源の森協定

 第三は、「水づくりは森づくり」という発想のもとに、木曽川の下流域にあたる愛知県の自治体(愛知中部水道企業団)と木曽町をはじめとする木曽広域連合との間で、「水源の森」森林整備協定が結ばれたことです。木曽郡の九三%が森林。整備の遅れが、山の荒廃や保水力の低下を招いています。この協定はほかと違い、県域を超えた複数の自治体間の協定で、かつ森林の一部を整備するのではなく流域全体を総合的に整備することを目的にしていることです。整備目標は年間八百ヘクタール。財源として上下流の両者が一トンの水に対して一円を基金に積み、国や県から助成も受けて「水と緑のボランティア」が間伐などに取り組んでいます。田中町長は「個人の民有林も含めて全部やる」と話す言葉にも力が入ります。

 田中町長は、こうした地域づくりを通じて「未来に輝く地域をつくりたい。それはこの地域だけでなく、きっと日本のすべての農山村の未来に光をあてることにつながるだろうと思っています」と話してくれました。

(新聞「農民」2007.8.27付)
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2007年8月

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