参議院議員選挙の結果について二〇〇七年七月三十日 農民運動全国連合会会長 白石淳一
一、二十九日に投開票された参議院議員選挙では、自民党が改選議席を二十七減らし、公明党が四人の現職議員を落選させるなど、安倍内閣、自民・公明与党にきびしい審判が下された。一方、民主党が二十八議席増やして参議院第一党となり、日本共産党は三議席、社民党は二議席を獲得した。 一、参院選結果の最大の特徴は、有権者が自民・公明政治の枠組みを拒否したことである。これは、首相や閣僚の不祥事、年金対応ミスなどにとどまらず、安倍内閣の十カ月の政治が、増税と国民負担の押し付けなど貧困と格差の拡大、農業破壊、過去の侵略戦争の正当化などの悪政を加速させてきたことへの審判である。憲法改定を第一の争点に掲げた安倍内閣の挫折は、“靖国派”の反動的な野望への痛打となった。 一、農業問題が焦点の一つとなり、自公農政への重大な審判が下ったことも特徴だった。農民連は、財界の要求を最優先して「日本から農業がなくなってもかまわない」という政治を推し進める自民・公明与党を正面から批判し、農民・国民の要求をもとにした農政のあるべき姿を提案してたたかった。参院選特集の新聞「農民」号外は百万枚を超え、多数の農民や国民との対話を広げ、地域集会の開催や軽トラパレードの実施など、農政を転換する世論を広げるために全力をあげた。 農民連の主張や活動への共感が広がり、農政への痛烈な怒りや農政転換を求める声が、これまでの政党支持の枠を超えて数多く寄せられた。選挙期間を通して三百人近い「農民」読者と数十人の会員が増えたのも共感のあらわれである。農民連の奮闘は、農政への批判を呼び起こし、自民党、公明党に審判をくだすうえで大きな役割を果たした。 今度の選挙で、農協組織が自民党の山田としお氏を「農協ぐるみ選挙」で役職員や農民に支持を押し付けた。自公政治に国民の重大な審判が下るというもとで、違法な手段で、自民党を覆い隠して支持を押しつけたことは、農民の利益を守る協同組合組織として許されるものではない。 一、今回の自公政治に対する審判は、これに替わる新しい政治の方向と中身について国民の選択が明らかになったものではない。民主党がアメリカと財界中心政治という点でも、格差と貧困、憲法や税制など、当面する国政の重要問題で自民党政治と同じ土俵にあることは明白である。特に農業では、財界の利益を代弁して総輸入自由化政策を主張し、「米価五千円」を想定した直接支払いを打ち出すなど、悪政に苦しむ農民や、自給率向上を願う国民の願いの受け皿になりえない。 国民が新たな政治の流れと中身を探求する時代の始まりであり、新たな政治的激動期を迎えている。自民・公明の政治に変わる新しい政治は、今後の国民の運動によってつくられていくと確信する。自民党が長年にわたって支持基盤にしてきた農山村での政治支配が大きく崩れつつあるなかで、農民の要求実現と農業の発展、平和で民主的な日本の実現を掲げる農民連の役割は、いよいよ重要なものになる。 そうした立場に立って、農民連は、よりいっそう農民・国民の要求を実現するために全力をあげる。また、広範な農民との結びつきを広げ、農山村を守る中核になりうる農民連組織の飛躍的な拡大強化、その「術」である新聞「農民」読者網を広げるために全力をあげるものである。
(新聞「農民」2007.8.13付)
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[2007年8月]
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