飼料高騰
アメリカのバイオ燃料増産が拍車
高騰は構造的なもの
日本大学生物資源科学科准教授
早川 治さんに聞く
飼料価格高騰の背景を日本大学生物資源科学科准教授の早川治さんに聞きました。
エタノールの需要増が要因
穀物相場は、これまでは不作年は暴騰し、豊作年は下落するというように気象条件によって変動してきました。ところが現在の飼料価格高騰の要因は、エタノール需要の増大や、中国など新興国での需要増大など構造的なものです。
飼料が高騰する要因としては、輸入時の船賃の高騰もあります。原油の高騰で船の燃料も上がっていること、また経済発展のめざましい中国が原料や食料の輸入を激増させているため、世界中の船舶が不足している、などが原因です。
国策化し増産続ける米政府
家畜飼料の世界最大の輸出国はアメリカですが、バイオエタノール生産も、アメリカがブラジルを抜いて世界最大です。
二〇〇六年にはブッシュ大統領が、政情不安な地域から石油を輸入している依存体質から脱却するために、バイオエタノール生産を国策化しました。そして二〇一七年までにガソリン使用量を二〇%削減する目標をたて、国や州をあげてさまざまなエタノール支援策をとっています。
アメリカ国内のエタノール生産は、二〇〇〇年の五十四工場、十七億ガロンから、二〇〇六年末には百七工場(ほかに四十九工場を建設中)、生産量は新増設分も含めると八十九億ガロンに達し、二〇一二年の目標も前倒し達成する勢いとなっています。
アメリカでのエタノールの原料となっているのが、トウモロコシです。エタノール向けのトウモロコシは毎年二割も消費が増えており、二〇〇五年ではトウモロコシの需要全体のうちエタノール向けが一四・五%を占め、輸出向け需要に匹敵するほどになっています。
二〇〇六年まで、トウモロコシの生産面積はそれほど増大していませんでした。今年に入ってからは、 “稼げる作物”となったトウモロコシに大豆やコメ、綿花などからの転作が激増しています。
総合的・長期的取り組み必要
バイオ燃料には、トウモロコシ、サトウキビなどから作るバイオエタノールや、大豆、ナタネなどから作るバイオディーゼル、家畜ふん尿や生ゴミなどを発酵させてメタンガスを取り出すバイオガスの三種類があります。ヨーロッパでは人間の食料を奪わないバイオガスの利用・研究が進んでおり、日本もバイオガスの活用など、もっと総合的で、長期的な視野で取り組む必要があります。
(新聞「農民」2007.7.23付)
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