バイオ燃料の需要増が影響
飼料高騰
畜産農家悲鳴
“半数の酪農家がつぶれる…”
トウモロコシ、大豆、小麦などの家畜飼料の高騰に、畜産農家が苦しんでいます。エサの急騰は、酪農、肉牛、養豚、養鶏などの畜産農家の経営を直撃します。高騰の背景には、バイオ燃料の需要増に伴う飼料穀物の国際相場の高騰、海上運賃の上昇など(2面に解説)があります。いま何が求められているのか?
飼料の自給率アップぜひ
安定制度で補てんしても4千円負担増
「これ以上、飼料代が上がったら、牛乳より高いエサになってしまう。もう限界だよ」。千葉県睦沢町で酪農を営む中村種彦さん(55)は、ため息をつきます。
中村さんは、消費者の食の安全を考えて、非遺伝子組み換えのトウモロコシや大豆の配合飼料を使用。昨年秋から急激に上がり始めた飼料価格は、昨年春が三万七千三百円だったのが、一年間で四万三千百五十円に跳ね上がりました。
一方で、乳価の下落。現状では、エサ代の高騰分を乳価に転嫁すれば、消費者の牛乳離れにますます拍車がかかってしまいます。「これでは、半分の酪農家がつぶれてしまう。すでに自殺者もでている。今の五十頭からあと二、三十頭牛を増やしたいが、先行きが見えないのでできない。やめるも地獄、続けるも地獄だね」。中村さんの悩みは尽きません。
飼料価格(全畜種平均)は、二〇〇六年七月から上昇を続け、一年間で一万一千五百円もアップしました。その上昇分は、配合飼料価格安定制度(別項)によって補てんされているため、農家の負担は、なんとか低く抑えられています。しかしそれでも約四千円増です。
アメリカから97% 輸入に頼る日本
畜産農家に飼料を供給する株式会社ゼンケイの佐藤純子さんは、飼料高騰の背景について、エタノール需要増による飼料穀物の国際相場高騰などの要因をあげ、「トウモロコシをアメリカから九七%、小麦をカナダから八一%輸入するなど、飼料穀物のほとんどを輸入に頼っているのが日本の現状です。これでは国際相場の影響をまともに受けてしまう」と指摘。
さらに「全畜種に言えるのですが、エサは上がるが、製品価格は上がらない、消費も伸びない。なかでもトウモロコシを主原料とする養鶏農家は本当に大変。二八%といわれる飼料の自給率を上げることが必要。そのためにも、農家の自給飼料の取り組みに加えて、国の補助が欠かせません」と強調します。
アメリカ農務省の予測では、トウモロコシ価格は上昇を続け、二〇〇九、一〇年をピークに、その後は二〇〇〇年の価格の倍前後で高止まりするとしています。(グラフ)
輸入に頼らず自給飼料中心で
北海道別海町森高哲夫さん
飼料高騰のなかで、なるべく輸入穀物に頼らず、自給飼料中心の酪農の取り組みが始まっています。
北海道別海町で「マイペース酪農」を実践している森高哲夫さん(56)は、夏は昼夜放牧により青草を飽食させ、冬はロールサイレージ(牧草を乾かし、ロールべーラー機で収穫・ラッピングして乳酸発酵させたえさ)を給与。濃厚飼料は、夏冬とも配合飼料(輸入穀物等)二キロと道産ビートパルプ(砂糖大根の搾りかす)二キロで、配合飼料の給与は極力抑えています。
〈別項〉
配合飼料価格安定制度 配合飼料価格安定制度は、配合飼料価格の変動が畜産経営に与える影響を緩和するために、基金を積み立て、値上げが一定の基準を超えた場合、農家に補てんを行う制度。生産者と配合飼料メーカーの積立金をもとにした通常補てん、配合飼料メーカーと国による積立金をもとにした異常補てんがあります。
(新聞「農民」2007.7.23付)
|