キナ臭いのが9条を変えることだ
消えた年金対策は選挙用“空手形”

　鋭い世相風刺と政治風刺が評判

〔プロフィル〕　たてかわ　だんのすけ、本名　山林博（やまばやし　ひろし）　1953年、群馬県前橋市生まれ。1974年に立川談志に入門、前座名「立川談Ｑ」として落語家スタート。1978年、二つ目に昇進、初代立川談之助を名乗る。1992年、落語立川流から真打ちに昇進。現在、一門の快楽亭ブラックらと新作落語集団「トンデモ落語の会」を主宰。また、評論やエッセーを雑誌等に連載、インターネットで映画評論もするなどマルチな活動をしている。

　いま「お笑いブーム」とか「落語ブーム」とか言われています。そんななかで、笑いのなかに辛辣（しんらつ）な皮肉と鋭い批判が持ち味の落語家に、立川談之助さんがいます。最新の「政治批判」を一席語ってもらいました。

最新の政治批判を一席…

　「国民投票法」―あれはイカサマ

　憲法っていうのは国の基本ですよね。そうコロコロ変えられたらタマランですよ。もし変えるんだったら「国民の八割以上が投票して、その五〇％以上の賛成が必要」だとかにすべきですよ。

　それにキナ臭いのが、九条を変えることですね。安倍さんたちは、日本を普通の「美しい国」にして集団自衛権でアメリカと一緒にドンパチ（戦争）したいんでしょ。次のねらいは徴兵制ですね。若い人たちがターゲットにされますよ。「憲法が変わったって関係ない」なんてノンキなこと言ってられません。

　芸人に定年ない老後が心配だね

　政府は、「一年間で調べ直す」っていうんだけど、五千万件にしたって一日十九万件、千人の職員が一件を二分で処理しないと終わらない。とても無理ですよ。七月の参議院選挙用の“空手形”と言ったところですね。

　6月から住民税が増え庶民は？

　「収入の少ない年寄りいじめだよ。住民税があがれば国民健康保険や介護保険もあがるし、わしたちに“早く死ね”って言っているようなもんだ」ってね。そのうち消費税率も五％から七％、いや一〇％にあげようとねらっているようですから、ご用心ご用心。

　不思議な2代目3代目の世襲

　最近の総理大臣は、森さんを除くと二代目、三代目がじつに多い。小泉さんも安倍さんも世襲の三代目ですね。爺（じい）さんや父親の築いてきた地盤、看板に乗っかって議員になった。田んぼや畑なら世襲もいいけど、選挙区を息子や娘にゆずるなんて、おかしいと思いませんか？

　地獄のエンマ様が許さないよネ

　それと「事務所経費」問題と「林道事業の談合事件」との関係、まだ真相が明らかでないのに「大臣の死で“幕引き”だ」なんてこと、国民が許しませんよ。第一、地獄のエンマ様が許さない。（笑い）

　うちの師匠（談志）の本名も「松岡」というんです。かつて参議院議員でしたから怒ってましたね。本来タダの議員会館の事務所費が「ナントカ還元水」とかで、年に数千万円もかかっていたなんて「白々しいにも程がある」ってわけです。

　私も真打ちになる前に三年間ほど師匠の私設秘書をタダでやっていた経験がありますんで、政治家の裏も表も教えられました。（笑い）

　明治大学の落研で落語を“修業”

　明大は面白いところで、落語の三遊亭円丈、小遊三、講談の宝井馬琴、俳優の高倉健さんや松原智恵子さん、それからビートたけしさんは工学部出身です。

　時事ネタで世相風刺をやるようになったのは、二つ目（真打ちの前）の時ですね。談志師匠のところは古典が基本ですから、私も古典をみっちり修業しました。

　ところが二つ目の時、円丈さんが「実験落語の会」を作ったんで顔を出したら面白くなってきて、それから新作と古典を両方やるようになりました。だから何でもやります。漫談だって巷談（こうだん）だって、結婚式の司会も頼まれれば飛んでいきますよ。（笑い）

　訂正　7月9日付8面、立川談之助さんの年齢に誤りがありました。五十四歳に訂正します。
　2006年7月30日、訂正しました。