大増税 庶民直撃
六月からの住民税大幅アップが、庶民のくらしを直撃しています。三〜四倍増は当たり前。七倍アップの人も…。いまなぜ大増税なのか? 負担増押しつけ、くらし破壊の張本人はだれか?
住民税エッ!? 7倍もアップ
埼玉・大利根の米農家塚田静男さん(59)
通知書みてビックリ
「住民税が上がるのはわかっていたが、まさかこんなに上がるとは!」――。埼玉県大利根町の米農家、塚田静男さん(59)は、六月初めに届いた「納税通知書」を見て、目を疑いました。
そこには年税額「九万二千七百円」とはっきり記されています。念のため、〇六年度の通知書を探し出して比較してみると二度びっくり。昨年度は「一万三千二百円」で、一気に七倍も跳ね上がったことになります。
課税明細書で確認すると、農業所得が昨年より六十万円増えました。これは、米の作付面積を十五ヘクタールから二十ヘクタールに広げたため、収量も増えたからです。今年からの税制改悪によって、これまで所得額によって五%、一〇%、一三%だった住民税が、六月から一律一〇%に統一されました。
塚田さんの場合は五%から倍の一〇%に。増えた所得分六十万円に一〇%課税され、六万円アップ。定率減税の廃止が加わって、住民税の大幅増となったのです。
米のほか、麦、大豆、イチゴなどを栽培する塚田さん。石油価格の上昇に伴う肥料代、ビニール、農機具などの値上げは家計を圧迫します。さらに介護保険料や国保料の負担増。「米価が低いなかで、収量を増やさないとやっていけないが、増やすにも限界がある。これからを考えると本当に頭が痛い」
高齢者 増税が増税生み3〜4倍も
六月からの住民税大幅アップに、多くの人が驚いているのではないでしょうか。なぜいま大増税なのか?
一つは、定率減税が廃止されたからです。定率減税は、所得税の二〇%(最高二十五万円)、住民税の一五%(最高四万円)を、それぞれの税額から差し引く制度で、一九九九年に導入されました。ところが二〇〇六年には定率減税の減税額を半減させ、〇七年には全廃してしまったのです。
二つめに、住民税額が増えるのは、「税源移譲」が重なったからです。政府は、国に入る所得税三兆円を自治体に入る住民税に移す「税源移譲」を実施し、所得税を減らした代わりに住民税を増やしました。こうして、総額一兆七千億円もの大増税が、庶民を襲ったのです。
高齢者の中には、住民税が一気に三〜四倍に増える人がいます。それは、昨年の高齢者増税が重なり、連動して増税になったからです。〇五年度までは、所得が百二十五万円以下の高齢者は、住民税非課税でしたが、〇六年度から、この制度は廃止されました。
住民税が課税になったお年寄りは、介護保険料も値上げされます。六十五歳以上の介護保険料は、住民税が課税か非課税かで一・六倍違うからです。
税制改悪で、所得や住民税額が増えると、国民健康保険料(税)も値上げされます。国保の所得割は、所得や住民税額に連動するからです。増税が増税を呼ぶ、「雪だるま」式の大増税です。
とくに六十五歳以上で、〇六年に初めて住民税が課税になった人の負担増は〇六年にとどまりません。住民税も介護保険料も〇八年までに段階的に引き上げられ、これと定率減税廃止による増税が重なって三〜四倍にもなってしまうのです。
さらに〇八年四月からは、後期高齢者医療制度が実施され、七十五歳以上の高齢者はすべて国保、健康保険などからはずされます。死ぬまで年間保険料(全国平均七万五千円)を年金から強制的に天引きされることになります。介護保険料と合わせると月額一万円になり、医療費一割の窓口負担とあわせて、大幅な負担増になります。
負担増押し付けの自民・公明・民主 参院選で 審判を
庶民に大増税を押しつける一方で、法人税率引き下げや所得税の最高税率引き下げなどの大企業・大金持ち減税はそのままです。
それどころか、〇七年度の税制改悪では、大きな設備をもつ大企業に有利な減価償却制度の「見直し」や証券優遇税制の延長で、定率減税廃止による増税額と同じ一兆七千億円もの大企業・大金持ち減税を導入したのです。
定率減税の半減・廃止、高齢者大増税を強引に決めたのは、自民・公明の与党です。とくに公明党は、〇三年の総選挙で「定率減税及び年金課税の見直し」を公約に掲げ、庶民増税を先導。まさに「増税戦犯」(東京新聞)です。
民主党も、「高齢者世代にも相応の負担を」と主張し、地方では、国保や介護保険の負担増を、自民・公明両党とともに推進しています。
さらに消費税大増税についても、政府や自民党幹部、民主党などから、参院選後に検討するとの発言が相次いでいます。
大増税を中止させるためにも、消費税増税を許さないためにも、参院選では、増税勢力に、「増税ノー」の審判を下しましょう。
(新聞「農民」2007.7.9付)
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