私の戦争体験と反省〈下〉埼玉農民連顧問 野本 家六さん(88)の手記
これは侵略戦争だ―わかった悲惨な戦争もう二度と“勉強してみよう”さて、ここから心の葛藤が始まります。というのも、この収容所には捕虜仲間で組織した反戦同盟があって、この人たちが毎日われわれ新参者に「どうですか?」「いま日本軍のやっている戦争は本当に正しいと思っていますか?」と、いたわるように話しかけてきます。「よその国のお先棒を担ぎやがって、とんでもない非国民だ」と無性に腹が立ちました。しかし、彼らは真剣にくいさがってきます。「われわれは決して非国民なんかじゃない、好きで捕虜になったわけではない」「むしろこの戦争を一日も早く止めさせることが本当に親兄弟や日本の国民を救うことになるんだ」と。ずいぶん悩みました。「よし! とにかく勉強してみよう」と、勉強を始めました。 時間がかかりました。でも今、日本軍がやっている戦争は侵略戦争で、どんなに聖戦だとか大東亜共栄圏の建設などと言っても、武器を持ってよその国を征服するということは、絶対に許されない侵略行為だということがわかってきたのです。
日本に帰れたら…私は目の前が明るくなる思いでした。おれは国賊なんかじゃないんだ、一日も早くこの侵略戦争を終わらせるために残された人生を捧げよう、それが死んでいった多くの戦友たちへの弔いにもなるのだ、いつか日本へ帰れる日がきたら、堂々と胸をはって、新しい民主主義の世の中をつくるために献身しようと心に誓って、仲間と帰国することができたのです。終戦の翌年、昭和二十一年六月でした。私の反省として今言いたいことは、あの悲惨な戦争を二度と繰り返してはならないということです。地球上からいっさいの核兵器をなくし、外国の軍事基地はいっさい取り払い、どんな小さな国でもその国の主権を認め合い、平等の立場で平和的に話し合うことこそ、世界平和へつながる道ではないでしょうか。 (おわり)
(新聞「農民」2007.6.25付)
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[2007年6月]
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