バイオ燃料が食卓を脅かすアメリカ・アースポリシー研究所 レスター・ブラウン氏の講演
アメリカ・アースポリシー研究所のレスター・ブラウン氏が五月二十三日に都内で行った講演の要旨は次の通りです。
いまや私たちは、世界中で、約八億台の自動車と二十億人もの貧しい人々とが、食料資源をめぐって奪い合う新しい時代に直面しています。
トウモロコシもアメリカでは来年末までに、エタノール生産は今の倍以上になり、穀物の三〇%近くが、自動車用の燃料に使われることになると考えられます。たとえばSUVという車一台を満タンにするのに必要な二十五ガロンの燃料は、一人の人間が一年間に必要とする穀物の量に相当します。しかし、アメリカの穀物の収穫量すべてを自動車用エタノールにしたとしても、必要としている自動車用燃料の一六%しか満たすことができません。 いまや穀物価格が、エネルギー価格に引きずられ、石油価格が上昇すれば、穀物価格もそれに従って上がっていきます。この一年間で、エネルギーの原料となるトウモロコシの価格は倍になり、小麦も十年来の高値をつけています。 アメリカでは、家畜のエサの原料は、主にトウモロコシです。世界的にみても、三大穀物(トウモロコシ、小麦、米)の収穫量のうちトウモロコシが一番大きなウエートを占めています。 アメリカが世界のトウモロコシ生産の約四〇%を占め、トウモロコシを輸入している国々の七〇%は、アメリカからです。日本は、世界最大のトウモロコシ輸入国ですが、その大部分をアメリカから輸入しています。アメリカのエタノール製造工場と日本の畜産農家がトウモロコシをめぐって競争しているのです。 典型的なアメリカの家庭の冷蔵庫を開けてみれば、牛乳、卵、チーズ、鶏肉、豚肉、牛肉、ヨーグルト、そしてアイスクリームも、家畜のエサであるトウモロコシから作られています。従ってトウモロコシの価格が冷蔵庫にある製品の価格をも左右することになるのです。
工場新築を停止ここ十年の間に、アフリカや中東の国々では、人口問題、森林伐採、砂漠化、地下水位の低下、気候変動などの問題に直面しています。これに加えて穀物の値段が上がり、食料の値段が上がれば、さらに政治的に不安定な状態になるでしょう。エタノール製造工場の新設を一時的に停止すべきだと呼びかけています。凍結して、現在どういうことが起こっているのか、どのような結果をもたらすのかを分析して、判断することが大事だと訴えています。 解決策は、電気を利用し、ガソリン消費量を半分に抑えるハイブリッドカーの導入や、風力発電など自然エネルギーの活用にあると考えています。 食料をめぐる車と人間との対立は、仲介者、調停者が存在しません。マーケット(市場)の力によってのみ、問題が深刻化しています。二十一世紀に生きているわれわれの将来にどう対処していくのか、非常に重要な岐路に立っています。
(新聞「農民」2007.6.25付)
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[2007年6月]
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