マヨネーズ10%アップ 大豆も オレンジも
食品値上げ相次ぐ
激しい人と車の食料争奪戦
バイオ燃料需要急増のあおり
バイオ燃料ブームのなか、日本ではバイオガソリンの試験販売が始まる一方で、食品価格の高騰が食卓を直撃しています。その背景にあるのは、世界中で繰り広げられる人と車との食料をめぐる争奪戦があります。いま日本で起きていることと、バイオ燃料の問題点を指摘した著名な環境学者、レスター・ブラウン氏の講演要旨を紹介します。
輸入依存の体質が食品高騰招いた
食料自給率向上こそ必要
バイオガソリン試験販売を開始
四月二十七日から、東京近県のガソリンスタンド五十カ所で、バイオエタノールを混ぜたガソリン「バイオガソリン」の試験販売が始まりました。
「バイオガソリン」とは、バイオエタノールと石油ガスを混ぜたETBEと呼ばれる液体燃料を七%ガソリンに混合したもの。性能や価格、給油方法などはレギュラーガソリンと同じで、一般のガソリン車で同じように使えます。
バイオエタノールと石油の混合方法は、ETBEのほかにも混合率を調節しやすい直接混合方式があり、アメリカ、ブラジルをはじめ世界的にはこちらが主流。しかし日本では石油業界からの強い要望で、ETBE方式を採用しました。なぜならETBE方式は混合を石油の元売り段階で行い、より燃料の一極支配がしやすかったからです。
バイオエタノールの輸出余力がある国はブラジル一国だけ。安定確保の展望がないまま、政府は二〇一〇年には全ガソリン販売量の二割をバイオガソリンにする計画です。
作付面積が減り供給量がダウン
食品価格の値上げが相次いでいます。キューピーは、六月からマヨネーズの価格を約一〇%引き上げました。「近年の食用油の高騰はめざましく、一九九五年当時と比べて一・五倍以上になっており、企業努力の範囲内では現状の価格での販売は大変厳しい環境となった」というのがその理由です。
食用油の原料となる大豆やナタネは価格が急騰。アメリカでは、エタノールの原料となるトウモロコシの需要が急増し、トウモロコシの作付面積が拡大。そのあおりで大豆の作付面積が減り、価格の高騰につながったのです。ナタネの主産地、カナダでも、ナタネの高値を記録しています。
値上げは、マヨネーズにとどまりません。飲料メーカー、キリン・トロピカーナは五月、果汁「トロピカーナ」の値上げを発表。オレンジの主要産地、アメリカ・フロリダ州でのハリケーン被害やブラジルでの「バイオエタノール原料であるサトウキビへの(オレンジからの)転作が進んだことによる供給量の激減」がオレンジの価格高騰を招いたとしています。
輸入依存の体質が食品価格の高騰を招いたのは明白であり、食料自給率を高めることが必要です。
2030年まで年600万キロリットル
政府が過大な目標
政府のバイオマス・ニッポン総合戦略会議は、バイオエタノール導入について、二〇三〇年までに、稲わらや麦わら、廃材などを使って国内のガソリン消費量の一割にあたる年間六百万キロリットルの国内生産が可能だとの過大な目標を掲げています。
また補助金や税の優遇措置などでバイオ燃料増産を後押し。〇八年には、バイオ燃料を混ぜたガソリンを扱う給油所に補助金の支給を計画。バイオ燃料製造工場を農業用地に建てられるよう規制緩和し、固定資産税の減免措置を検討するなど至れり尽くせりです。
(新聞「農民」2007.6.25付)
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