「農民」記事データベース20070618-784-04

国際フォーラム
パネリストの報告から


農業破壊攻撃に負けず食糧主権の運動大きく

農民連会長 白石 淳一さん

 私は、北海道岩見沢市で水稲、玉ネギ、小麦などを栽培していますが、大変厳しい状況におかれています。北海道ではこの五年間で一万戸余りが離農しました。離農跡地を引き受けて経営面積を拡大しても、経営が好転する状況にはなっていません。その原因は農産物価格の低迷、とりわけ生産費さえ償えない米価水準にあります。

 家族経営しめだす

 政府は、農家すべてを対象にした価格保障を全廃して家族経営を生産から締めだし、一部の担い手に施策を集中する「農政改革」を実施しています。しかも、日本の財界や政府、アメリカは、FTA・EPA推進のためには、この改革でも不十分だとして、新たな攻撃を強めています。

 その舞台になっている経済財政諮問会議では、完全に自由化すれば食料自給率が一二%にまで下がるという政府の試算に「それでも生産は結構残るじゃないか」「コストが下がらないのであれば、日本で米を作る必要はない」という暴論がまかり通っています。

 各国農民の連帯で

 こういう究極のEPAの入り口に位置づけられているのが、日豪EPAです。最も影響を受ける北海道では、その影響額が一兆三千七百億円にのぼり壊滅的な打撃を受けると予想されています。いったい誰が日豪EPAで利益を得るのか、オーストラリアの農業はどうなっているのか、農民はどんな考えでいるのかなどを知りたくて、仲間とオーストラリアへ調査に行ってきました。

 そこでわかったことは、第一に、オーストラリア農業は干ばつとのたたかいの歴史であり、きわめて不安定な生産を余儀なくされていることです。農業生産の不安定さを増す国に、日本の食料を依存して良いのでしょうか。第二に、オーストラリアからはすでに十分すぎるほどの農畜産物が輸入されていることです。EPAで利益を得るのは、農民や消費者ではなく企業と財界だけです。第三に、訪問した生産農家は「EPAはお互いの利益にならない」と明言していますが、農民同士の目線で見れば、連帯は可能です。食糧主権の運動が、どんな国においても生命力をもって広げていけることを実感しました。

 私たちは、どんな厳しい農業破壊の攻撃にも負けるわけにはいきません。それは、私たちの運動が世界の飢餓をなくし、民衆の連帯で大国やアグリビジネスの横暴を押さえることにつながるからです。食糧主権を確立させ、農業・食料を守る運動を大きく発展させましょう。

(新聞「農民」2007.6.18付)
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2007年6月

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