「農民」記事データベース20070618-784-01

新機器(GCマス)が本格稼働

食の安全・安心を守る砦いっそう充実

6月21日 農薬分析受け付け

 農民連食品分析センターが昨年導入した新機器、ガスクロマト質量計(GCマス)がいよいよ本格稼動。分析数が大幅に増え、分析の精度もよりアップします。同時に、新たに細菌検査の受け付けを始め、“食の安心・安全を守る砦(とりで)”としての役割がいっそう充実します。


 分析数ふえ精度も一段と向上へ

 分析センターは昨年八月に東京都板橋区の病体生理研究所に移転。十月には最新鋭の新機器、ガスクロマト質量計を導入し、本格稼動のための準備・回収試験を行ってきました。その結果、現行の百二十八農薬から、約百八十の分析試験に成功。六月二十一日から大幅に増えた農薬の分析依頼を受け付けます。

 ガスクロマト質量計が本格稼動すれば、(1)分析できる農薬成分数が大幅に増える(2)質量分析で分子構造が解明され、精度が一段と向上する(3)分析時間が短縮され、効率よく分析ができる―などの効果が期待されます。約百八十の農薬について、分析開始とともに新料金を設定。基本的には今までの料金を維持し、多くの人に利用してもらえるように改定しました。

 輸入品の残留農薬が多く違反

 食品に残留する農薬や抗菌剤などに残留基準を設けるポジティブリスト制が昨年五月二十九日に始まって一年が経過しました。施行後半年間の二〇〇六年十二月末までに違反が二百六十件摘発され、前年同期比で九倍も増加。輸入品の残留農薬では、シイタケ、にんにく茎、ショウガ、乾燥キクラゲ、ウーロン茶、マンゴーなどが多数違反になっています。(表1)

 
(表1)輸入違反の件数の多いもの
(06年7月〜07年3月)厚労省監視統計
品名
輸出国
件数
違反内容
(農薬)
生鮮しょうが 中国
24件
BHC
生・冷凍にんにく茎 中国
13件
ピリメタニル
生鮮青ネギ 中国
7件
テブフェノジド
生鮮しそ葉 中国
4件
ヘキサフルムロン
生鮮しいたけ 中国
3件
フェンプロパトリン
生鮮絹さやえんどう 中国
3件
フルシラゾール
乾燥白きくらげ 中国
25件
メタミドホス、クロルピリホス
生鮮マンゴー 台湾
16件
シフルトリン、シペルメトリン
生鮮カカオ豆 エクアドル
78件
2、4−D
生鮮カカオ豆 ガーナ
61件
クロルピリホス、ピリミホスメチル
小粒落花生 パラグアイ
10件
シペルメトリン
ウーロン茶 中国
23件
トリアゾホス
ウーロン茶 台湾
10件
ブロモプロピレート
(抗菌剤、カビ毒、添加物)
いか製品 ベトナム
29件
クロラムフェニコール
養殖えび ベトナム
23件
クロラムフェニコール
むき身えび インドネシア
20件
AOZ
トウモロコシ アメリカ
65件
アフラトキシン
ハトムギ 中国
11件
アフラトキシン
煎(い)りピーナツ 中国
8件
アフラトキシン
アーモンド アメリカ
6件
アフラトキシン
ナチュラルチーズ イタリア
7件
ソルビン酸カルシウム
養殖うなぎ 中国
7件
セミカルバジド
調味料 インド
7件
TBHQ

 クロラムフェニコールやAOZなどの抗菌剤が養殖魚介類から検出され、強い発がん性をもつカビ毒、アフラトキシンがアメリカ産トウモロコシなどで多数発見されました。TBHQ、二酸化硫黄など添加物違反も相次いでいます。

 一方国内では、ポジティブリスト制度の導入後、自ら生産した農産物の安全性を確保するためのさまざまな取り組みが始まっています。

 特に、生産過程を記録する「生産履歴記帳運動」や、生産物の残留農薬検査を定期的に行うなど安全性を証明するためのシステム化の有無が、取引条件になり始めています。

 石黒昌孝所長は「分析センターをさらに活用して、作っているもののよさや安全性をアピールしてください。産直品、地元産農産物のすぐれた点を事実で知らせ、国産品を大いに増やし、食料自給率を向上させましょう」と呼びかけています。


細菌検査も新たに開始

病体生理研究所と共同で

 分析センターは、新たに病体生理研究所と共同して、細菌、カビ等の検出や細菌数の検査を受け付けます。

 食の安全性を脅かす要因(「生物学的要因」「化学的要因」「物理学的要因」)を、まずは原材料で把握し、分析し、予防と対策を行うことによって安全性を確保することが重要になります。

(表2)食品微生物検査材料別セット項目 「化学的要因」は、農薬、重金属、殺虫剤、添加物等、健康に害を及ぼすもので、これらの分析は引き続き、食品分析センターが担当します。病体生理研究所で検査する「生物学的要因」は微生物によるものが大半です。目に見えない細菌やカビ(真菌)は食材、食品を汚染し、腐敗させ、感染症の原因となります。病体生理研究所では、六十年余りの臨床検査の経験を生かし、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌などの食中毒の原因となる菌をはじめ、一般 生菌数、大腸菌群等の検査を担当します。食品微生物検査の材料別セットも設けましたので、ぜひご活用ください。(表2)

 「物理的要因」は、本来なら食品に含まれない固形物等で、ガラス片、毛髪、昆虫の死がい、木片等が何らかの原因で混入したものです。これらについても電話でお問い合わせください。

 生産者と消費者との橋渡しに…

 病体生理研究所の福井徹・生活科学分析室長は「食の安全は、健康の根本にかかわります。食品の安全性を証明することで、『安心』の付加価値がつくのです。食材を提供する側が、『これは安心です』と自信を持って言え、消費者が安心して食べてくれる。このような生産者と消費者との橋渡しのお手伝いができればと考えています」と話しています。

(新聞「農民」2007.6.18付)
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2007年6月

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