農業に夢託す団塊世代
野菜が大きくなるのは―
子どもの成長を手掛けるよう
野菜づくりに励む 根本 健美さん
(埼玉・春日部楽農倶楽部会員)
「将来は、農業をしたい人に教えたり、農業体験できる農園をつくりたい」――農業に夢を託し就農をめざして野菜づくりに取り組んでいる根本健美さん(60)。埼玉・春日部楽農倶楽部の会員です。
県公社の「就農予備校」に通い
根本さんは、高橋晃さん(春日部楽農倶楽部会長)の畑、二十アール余りに、四月からサトイモ、やつ頭、トウモロコシ、キャベツ、ブロッコリー、ホウレンソウなどを次々に作付けしています。ほかにもジャガイモ、ニンニク、エシャレット、ネギ、ヤーコン、菊芋、カボチャ、カブ、コンニャクイモなどを作っています。
トラクターで畑を耕し、畝(うね)をつくり、マルチを張り、野菜の苗や種を植えています。種植えやマルチを張るなど一人では大変な作業のときには妻の春美さん(55)も手伝います。
トラクターの運転も上手にこなし、鍬(くわ)の使い方といい、畝の作り方といい、立派な“農民”です。それもそのはず、埼玉県農林公社の「就農予備校」に通い、農業の基礎や実践的技術の研修を受けました。同公社は、幅広い農業の担い手を確保するために、就農予備校の卒業生に農地を借りて研修をさせています。同公社が高橋会長から借りた畑を根本さんに貸し与えている関係になっています。
根本さんは「現在、畑が二カ所に分散しているので、行き来するのに時間がかかる。高橋会長の協力を得て、年内には会長の畑近くに五十アールを確保し、認定農家の条件をクリアしたい」と、本格的な農民をめざし全力投球しています。
両親の介護のため定年前に退職
春日部市に生まれ育った根本さんは、大手のアルミ建材メーカーに三十年余、営業で働いてきました。転勤も多く、八十歳代の両親の介護は春美さんがしていましたが、介護疲れで倒れてしまいました。夫婦二人で世話をしようと定年の二年前に退職しました。
農家の出身ではありませんが、「家庭菜園が好きで三十年以上も経験している」といいます。家庭菜園を通して農業の魅力を感じていた根本さん。 「自宅の近くでできるのは農業だと思った。会社の給料よりも少なくなるが、ぜいたくはせず、いくらかでも生活できればいい」と言い、「野菜が大きくなるのは、子どもが成長するのと同じ。孫に食べさせるためにスイカを植えた」と笑顔で語ります。
両親が介護施設に行っている合間に農作業を手伝う春美さんは「まだ生活費のたしになりませんね」と笑いながら話していました。
根本さんは、高橋会長や家族から指導や協力を得ながら、きょうも畑で土と農作物と向き合い、野菜づくりに励んでいます。
(埼玉・春日部楽農倶楽部 西村正昭)
(新聞「農民」2007.6.11付)
|