「農民」記事データベース20070611-783-07

和歌山

カゴメ 巨大トマト工場
工事ストップ

売り上げ伸びず

 巨大トマト工場の工事がストップ―。「アジア最大のハイテクトマト菜園」を売り物にしていたカゴメ「加太菜園」(和歌山市)の二期工事が時期不明で着工できずにいます。何があったのか?


地元経済効果に疑問・税金のムダ遣い

誘致すすめた県の責任重大

 加太菜園は、コンピューター制御による大量の水やガスを使うハイテク菜園。完成後は、和歌山県のトマト年間生産額に匹敵する六千トンの出荷を見込んでいました。

 二〇〇四年十二月に着工し、〇五年六月に一期工事(五・二ヘクタール)が完成、十月にはトマトの出荷を開始しました。当初の計画は、二期工事(五・二ヘクタール)を〇六年九月に着工、〇七年完成予定。〇九年には三期工事(九・七ヘクタール)が完成の予定でした。

 しかし二期着工の予定である昨年九月を過ぎても、工事に着手する気配がいっこうにありませんでした。日本共産党和歌山県議団の調査で、着工時期不明で延期になっていることが判明しました。本紙もカゴメ本社広報に問い合わせたところ、未着工を認めたうえで、その理由や着工時期については答えませんでした。今後についても「社内で検討している最中」とのべるだけでした。

 過大な計画を作成

 県は「売り上げが予想より伸びていない、との報告をカゴメから受けている」と言います。「日本人の食生活は欧米化する」という思い込みから作られた過大な計画。見通しの甘さが問われます。

 さらに「病害虫の大量発生によるトマトの生産減少が要因と聞いている。農薬を使わず、環境にやさしいということでしょう」(県)などと弁護しますが、水や化石燃料、ガスをふんだんに使っていて、環境にやさしいと言えるのか疑問です。

 「二十年間で五百八十三億円の経済効果」と宣伝し、誘致を進めた県の責任も重大です。営業に伴う経済波及効果の試算では、県外には二十年間で九十四億円なのにたいし、県内は十四億円と、地元への貢献度が低いという結果がでていました。県も「大差ない数字がでている」と認めざるをえません。実際に、収穫されたトマトは、大阪の配送センターに運ばれ、近畿地方に配送。一部は、地元・和歌山に送られますが、それも大手デパート店頭の一角に並ぶだけです。

 県が期待していた雇用効果も、正社員七、準社員三十一、一日五時間勤務の協力社員は百十五人。多額の補助金をつぎ込んでおきながら、この程度の雇用しかありません。

 県は、土地開発公社から一平方メートルあたり年間五百六十円で土地を借りる一方、カゴメには百円の格安で貸し出しています。差額は二十年間で三十四億円にもなり、これだけ県民の税金を浪費しているのです。

 トマト農家に支援

 工事延期という事態にたいして、日本共産党の松坂英樹県議は「計画の破たんが明白な事業に多額の県民の税金を使っていいのでしょうか。計画自体を見直すとともに、県は、カゴメへの破格な安い賃料を見直し、県内のトマト農家への支援を手厚くすべきです」と話しています。

(新聞「農民」2007.6.11付)
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2007年6月

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