「農民」記事データベース20070604-782-10

知った、団結の力の素晴らしさ

牛丼「すき屋」の青年たち

 昨年十一月、牛丼チェーン「すき家」のアルバイトが労働組合を結成し、解雇を撤回させたばかりか、全店で一万人以上いるアルバイトの残業代を払わせた、というニュースがテレビやマスコミを駆け巡りました。大手外食産業で働く青年たちが、金もうけ一辺倒の会社に声をあげた――青年たちの願いとたたかいを探りました。


“モノ扱いは許せない”

解雇撤回、残業代払わせた
全国青年大集会で訴え

 昨年七月のある日突然、首都圏青年ユニオンの事務所に、二人のアルバイト青年が訪ねてきました。二人は大手牛丼チェーン「すき家」の東京・渋谷の店舗で社員なみに働いていましたが、「店舗の改装」を理由に、突然、店のスタッフ全員が解雇に。「僕らは備品じゃない。生活もかかっている。モノ扱いは許せない」

 よく聞くと、解雇手続きもズサンで、残業代も恒常的に払われていないなど、違法・無法がまかり通っていました。解雇通告を受けた六人はユニオンに加入。五回にわたる団体交渉のすえ、全員の解雇が撤回され、解雇中の休業手当のほか過去二年間の残業代が払われることになりました。さらに日本全国の「すき家」で、法律どおりに残業代が支払われることになったのです。

 このニュースを聞いて、同じように理不尽な理由から、お店のスタッフ全員が解雇の危機に直面していた仙台市内の店舗からも声が上がりました。ユニオン加入を店のスタッフに呼びかけた福岡淳子さんは、「会社から見たら私たちアルバイトは取り換えのきく部品かもしれません。でも私たちはモノじゃない。私たちにも意志と生活があるんです」と言います。

 その後、「すき家」を経営する(株)ゼンショーは、残業をさせないなどの組合員差別をはじめ、団体交渉にも応じないといった姿勢をとるようになり、現在は、ユニオンに加入しても短期的なメリットは期待できない状況です。それがわかってもなお、ユニオンには全国の「すき家」で働くアルバイト青年の加入が止まりません。アルバイトながら店長だった福岡さんも、収入が三分の一に激減。「でも私はやめません。間違ったことはしていないと確信するから」

 五月二十日には、東京・明治公園に全国の青年が集い、「まともに生活できる仕事を!人間らしく働きたい!全国青年大集会」が開催されました。

 「すき家」の青年や青年ユニオン、大企業の偽装請負とたたかっている青年など様々な分野の青年が「たたかえば、変えられる。連帯して、立ち上がろう」と、呼びかけました。青年に使い捨て労働を強いる安倍政権と財界に、参院選で突き付けたい青年の声です。


腹ペコの若者がいっぱい

 「よく飽食って言われますけどウソです。お金がなくておなかいっぱい食べられない人はたくさんいます」――並盛り一杯三百五十円の牛丼チェーンで働く福岡さんが見た庶民の「食」は、言葉を失う厳しさです。

 非正規労働者ふうの男性が「本当は特盛り食いたいんだけどさア、金ないんだ…」と。「たった二百円の差が出ない人もいるし、ネットカフェにも入れず、一杯七十円のみそ汁で五時間粘る人もいます」と福岡さん。

 ユニオン書記長の河添誠さんは、「農家の皆さんには、生産者の手を離れた農産物が、誰に、どのように食べられているか、その現場に関心をもってほしい」と言います。「低賃金労働者は食事の“質”にこだわることができません。すべての人々が安全な食料を食べられる社会を、ともに実現していけたらと思うんです」

(新聞「農民」2007.6.4付)
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2007年6月

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