「農民」記事データベース20070528-781-09

「人の移動」要件を緩和

日タイEPAの問題点〈下〉

条約違反の廃棄物輸出


 タイの伝統舞踊・料理の指導者…

 日タイEPAでは、人の移動についても規制緩和が約束されています。日本からタイへの移動については、進出企業を中心に、現在でも常時三万六千人の日本人がタイ国内に在留しており、就労目的の在留許可要件の緩和、就労に係る手続きの簡素化などが合意され、企業当たり労働許可発行数の上限などについては、継続協議とされています。

 タイから日本への人の移動については、タイ料理人の入国要件緩和(実務経験十年以上を五年以上に)、タイの伝統舞踊、音楽、料理、ボクシングなどの指導者の入国・一時滞在についての要件緩和などが合意され、タイ・スパ・セラピストと介護福祉士の受け入れについては継続協議とされました。

 日本から無税で廃棄物を“輸出”

 タイ国内はもちろん、国際的な環境問題NGOからも強く撤回要求が出された日本からの廃棄物輸出については、原案通 り、何の手直しもなく、またタイ国内での反対運動に、タイ政府が日本政府に要求したという付属文書による「日本政府はタイへの有害廃棄物輸出を推進する意図はない」という確認も、結局、用意はされたものの最終的には添付されることなく調印が行われました。

日タイEPAによって関税が削減される主な廃棄物
石  綿
灰、残留物
 
 硬亜鉛棒
 その他亜鉛を含む灰、残留物
 加鉛ガソリン残渣、アンチ ノック剤残渣
 その他鉛を含む灰、残留物
 銅を含む灰、残留物
 アルミニウムを含む灰、残留物
 砒素、水銀、タリウムを含むもの
 アンチモン、ベリリウム、カドミウム、クロムを含むもの
都市廃棄物焼却炉からの灰と残渣
使用済み原子炉用(放射性)燃料要素(カートリッジ)
医薬品廃棄物
都市廃棄物
下水汚泥
ハロゲン化合物
金属浸漬溶液、油圧作動油、制動油、不凍液
その他化学産業廃棄物
(注) 化学物質問題市民研究会ホームページから。分類で、Aは発効日に撤廃、Bは毎年引き下げ撤廃。

 この廃棄物に関する関税撤廃のリストは、外務省が公表した和文テキストからは除外されており、英文テキストにだけ掲載されていて、その概要は、別 表のとおりです。この表からも有害廃棄物、とくに使用済み原子炉用放射性燃料カートリッジや医療廃棄物などまでが日本からタイへ「輸出」される道が開かれていることがわかります。フィリピンとのEPAにつづくこのバーゼル条約など国際法違反の暴挙には、日本へのさらなる国際的批判が高まることは避けられません。

(山本博史)
(おわり)

(新聞「農民」2007.5.28付)
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2007年5月

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