「農民」記事データベース20070514-779-01

秋田県能代市鶴形地区

そばづくりで“町おこし”

地域ぐるみ生産・加工・販売

 秋田県能代市の鶴形地区では、地域ぐるみでそば生産、加工、そして販売に取り組んでいます。七十戸の農家が“捨て作り”をやめて荒廃した減反水田をそば畑に復興し、元気なお母ちゃんたちが鶴形そば粉百パーセントの生そばを売り出し、町おこしにも一役かっています。鶴形に“そば革命”が起きました。


転作田を活用しそば栽培
お母さんたちが販売の先頭に
県・市の助成で製麺機を導入
キーワードは集落の助け合い

 鶴形地区には、ポンプで米代川から水を揚げないと米作りができない高台に四十ヘクタールほどの水田がありましたが、減反とポンプの故障でこの地域の水田は荒れ果ててしまいました。三年前に、市やJAの指導で、転作作物としてそばが栽培され、鶴形そば生産組合を立ち上げました。

 お客さんの“おいしい”が励みに

 最初、台風などの影響で一トン程度しか収量がありませんでしたが、せっかく採れたそばでそば祭りをしたところ、四百人余りの参加で大成功。二〇〇五年十月には「お客さんの喜ぶ顔が見たい」と、五人のお母さんたちがそば製造加工組合を設立しました。そして、お母さんたちの熱意が実って、県や市から麺製造機などに助成も。いろんなイベントの会場で販売しようとしましたが、最初は恥ずかしくてお客さんにお尻を向けていました。でも、そばを食べてくれるお客さんの喜んでくれる顔が自信になり、だんだんと「鶴形そばはいかがですか?」と話せるようになって来ました。いまでは、東京・日本橋の観光イベントにまで進出。「まさか東京まで行くとは思わなかった。健康で明るく楽しくをモットーに、お客さんの“おいしかったよ”が何よりの励み」と、代表の小林順子さん。

収入ふえ、耕作放棄地へった

 収量も栽培面積も飛躍的に増加

 鶴形手打ちそばは、百パーセントの鶴形産そば粉を豆乳をつなぎにした風味豊かなそば。また、白神作々楽(ささら)生そばは、鶴形産そば粉に白神山地でみつかった乳酸菌・作々楽を入れ、保存料なしで長期保存が可能な生そばです。年越しそばの注文は、一年目は一万一千食、今年の二年目は倍の二万食に。

 こうした販売に、そば栽培も去年の十五トンから二十六トンに、栽培面積も十七ヘクタールから二十七ヘクタールと飛躍的に増加し、荒廃した水田が減少しました。

 さらに、そばを収穫するための作業受託組合を設立し、県と市の助成でコンバインを導入。当初は、農家負担もあり不安もありましたが、試してみると“これはいい”とすべての農家が作業受託組合に参加。収穫時には、一台しかないコンバインのやりくりに四苦八苦の状況です。そば生産組合の副組合長で秋田農民連の事務局長でもある小林秀彦さんは「一台のコンバインでは限界があるし、乾燥が十分でないといった品質上の問題もある」と課題をあげます。

品目横断対策の対象外でも

産地づくり交付金は出る
奨励品種助成も今年から

 独自にひとつのルートを築いた

 四月から品目横断対策が始まりましたが、そばは対象外。しかし、産地づくり交付金から十アールあたり最大四万九千円の助成が出ることに。また市も、今年からそばを奨励品種にして助成を始めます。

 四月二十七日に開かれたそば生産組合の総会には、去年の倍近い五十人余りの農家が参加。市農林課長の北澤至さんも駆けつけました。

 組合長の小林忠雄さんは、こうあいさつしました。「そばを通じて生産から加工・販売までひろげ、一つのルートを築いてきた。収入が増え耕作放棄地が減少し、まことに喜ばしい」―遠く白神山地を望む鶴形の郷には、ウグイスの鳴き声があふれていました。

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 鶴形そばの注文は、そば製造加工組合 電話・Fax 0185(58)3920まで。

(新聞「農民」2007.5.14付)
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2007年5月

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