3度以上上昇で食糧生産が減少
数億人が深刻な水不足に
IPCC部会が 報告書で警告
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」(別項参照)の第二作業部会が四月六日、「地球は今まさに温暖化の影響を受けている」と警告する報告書を発表しました。
貧困地域への影響が極めて大
報告書がくりかえし強調しているのは、地球温暖化によって貧しい人々・地域がより危機にさらされるということです。
「気候変動に最もぜい弱」とされたアフリカでは、二〇二〇年までに最大で二億五千万人が水不足に直面。多くの地域で農業生産が激減し、栄養失調が広がると警告されています。
アジアでも、今世紀半ばまでに中央・南アジアで穀物生産が三〇%減り、「非常に高い飢餓のリスク」にさらされると予測。アジア全体で十億人が水不足になり、東南アジア・南アジア・東アジアの人口が密集しているデルタ地帯が、海面上昇により毎年洪水に見舞われるといいます。
また全世界的に、貧しい人々は河川の氾濫(はんらん)原や、異常気象が起こりやすい地域に住んでいたり、気候変動を受けやすい農業などに依存していて、「気候変動は貧困地域への影響が極めて大きい」(パチャウリ議長)と、強調しています。
水不足・干ばつ激しい水争いも
温暖化は、食糧輸出国や先進国にも大きく影響します。オーストラリアでは、農業地帯の東部と南部で水不足と干ばつが広がり、二〇三〇年までに農林業の生産が減少。北アメリカでも水資源をめぐって競争が激化すると予測されています。
また食糧・農業については、地球の平均気温が三度以上上がると、全世界的に食糧生産が減少。干ばつと洪水が増え、とくに赤道に近い季節的な乾燥地域では一度上がるだけでも飢餓の危機があると警告しています。
同時に報告書が、ある程度の温暖化は避けられないが、温室効果ガスの排出量を減らせば減らすほど、温暖化を抑えることができ、持続可能な開発が行われればその悪影響を減らすことができると結論づけていることも重要です。
被災人数が米国など反対で低く
当初、報告書原案には、水不足の被害が十〜三十二億人に及び、最大で一億二千万人が飢餓に直面するとの内容がありました。しかし温室効果ガスの最大排出国であるアメリカ、中国、サウジアラビアなどが強硬に反対し、数値と表現が大幅に弱められました。
二月には、第一作業部会が今世紀末には最大で六・四度(一九九〇年比)気温が上昇し、その主要な原因は人間の活動である、と断定した報告をまとめています。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル) 人間活動が原因の気候変動(温暖化など)について、世界中の最新の研究をとりまとめる国連の組織。一九八八年、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立され、五〜六年ごとに発表される報告書は、各国の政策や国際政治の科学的根拠として、大きな役割を果たしてきた。今年発表される第四次報告書は、二〇一二年で期限が切れる京都議定書以降の国際的な枠組み交渉の出発点でもある。百三十カ国、二千五百人の専門家・科学者が参加しており、第二作業部会は、気候変動の自然・社会への影響と対応策がテーマになっている。
(新聞「農民」2007.4.30付)
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