農薬使わず見栄え悪いが「安全でうまい」
直販施設「ゆうのう」
田舎料理「けんちん亭」
都市と農村の交流の場です
茨城県つくば市
市民農園の素人からベテラン農家の地場野菜がいっぱい
茨城県つくば市。筑波山の麓(ふもと)に、都市と農村の交流の場、直販施設「ゆうのう」と田舎料理「けんちん亭」があります。市民農園の素人からベテラン農家まで、いろんな人が作った地場野菜が盛りだくさんの両施設。オーナーの恵田三郎さん(70)は、県南農民組合の賛助会員です。
“遊びごころで楽しい農業”
恵田さんが“遊びごころで楽しい農業”“野菜つくって健康つくろう”と呼びかけて、市民農園をスタートさせたのが十二年前。つくば市役所(合併前は豊里町)に三十八年余り勤め、地域の農政や企画などに携わってきました。しかし、広域合併して小回りが効かなくなった行政に限界を感じ、定年まで二年を残して退職しました。そして、「こんなことを始めますのでよろしく」と、市民農園を地元の記者クラブに持ち込みました。
たっぷり食べられゆっくりくつろげる店
新聞記事を見て、自宅わきの十二アールの土地を四十区画に区切った農園は、アッという間にいっぱいになりました。会社員、研究者、主婦、写真家など年齢層も幅広い三十六人が参加しました。野菜づくりは大半の人がはじめて。芽が出ては喜び、大きくなっては喜び、とりわけ収穫の時は大変。そしてそのうまさに感激。その喜びようを目の当たりにして、さらにやりたい人が大勢いることがわかり、二年目には面積を約十倍に。「遊農園」と名づけられたこの農園の参加者は、必ず「遊農くらぶ」の会員になります(会費は無料、会報が年六回)、恵田さんは、会員の一人でも二人でも、セミプロ、プロを目指してもらうためには、自前の売り場が必要と考えて、退職金をはたいて直販施設「ゆうのう」と田舎料理「けんちん亭」を建てました。
消費者の反応に農家も刺激され
直販施設「ゆうのう」には、周辺農家の野菜といっしょに、「平日はサラリーマン。土日は農民。農薬不使用です」とのパネルの前に、遊農園の素人が作った見栄えのしない野菜が並んでいます。「安全でうまい」「あの人のネギはないのか」という消費者の反応を見て、プロの農家が刺激され、有機・無農薬を目指そうという空気が広がっています。
研究学園都市の建設で生まれたつくば市は、新旧住民の割合が四対六。交わりにくい新と旧の住民を、土・農をベースに食を通して交流しようというのが「けんちん亭」の狙いです。いろいろな野菜の具が入って互いの味が溶け合うけんちん汁のように、いろいろな人の交流で味を醸し出したい。それはまちづくりにも役立つはず。そんな思いで「けんちん亭」と名づけました。「けんちん亭」は、「ゆうのう」の野菜や地鶏などの素材を生かして、うまい野菜がたっぷり食べられる店、いろんな人と出会える店、ゆったりとくつろげる店です。
恵田さんの名刺には、「人と仲良く 自然と仲良く」と書かれています。けんちん汁のような素朴な人柄。茨城にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。
(茨城県農民連 村田深)
(新聞「農民」2007.4.23付)
|