本の紹介
秋元波留夫・清水寛共著
忘れられた歴史はくり返す
障害者の戦争体験通して憲法・平和の大切さ告白
障害者団体「きょうされん」(旧称:共同作業所全国連絡会)発行のこのブックレットは、百歳の精神科医・元東京大学医学部教授の秋元波留夫さんと、「戦争と障害者」研究の第一人者、埼玉大学名誉教授の清水寛さんの共著です。
秋元さんは、「憲法九条と精神障がい者―一世紀を生き抜いて思うこと」のなかで、「私は戦争時代を生き抜いてきた精神科医として、憲法、とくに九条は、体やこころに障がいを持つ人たちの命とくらしを守るために、なくてはならない拠りどころだと確信しています」と述べています。そして、戦時中に体験した精神障がい軍人のこと、障がい者の多くが食料不足で飢え死にさせられたこと、そして戦争がたくさんの障がい者を作り出すという歴史的事実を告白しています。
清水さんは、「戦争と障がい者〜地球時代を共に生きるために〜」のなかで、戦時下に空襲などで障がい児学校はどのような被害を受け、障がいある子どもたちはどんな危険にさらされていたのかを明らかにしています。そして、ヒロシマ・ナガサキで障がい者が語る原爆の惨状は胸に突き刺さります。また、障がいを負っているからこそ、“報国活動”をしたり、「戦盲戦士」とたたえられたり、「陸海軍技療士」としてマッサージ師に志願した事実なども、障がい者の証言をもとに述べています。
このブックレットは、「障害者は平和な社会でしか生きられない」という確固たる信念と、自らの体験、長年にわたる丹念な調査にもとづき明らかになった事実に裏打ちされた価値ある一冊です。
定価700円 きょうされんTEL03(5385)2223
(新聞「農民」2007.4.23付)
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