「農民」記事データベース20070205-766-01

埼玉県深谷市 食業を考える会

首都圏百貨店で野菜販売

農の視点から食を考える農家グループ

 農家の視点から食の問題を考えるグループを作り、その活動を行政が支援する取り組みが生まれています。深谷ネギに代表される全国有数の野菜の産地、埼玉県深谷市の農家グループが、県の支援を受けて深谷の野菜を都内で販売しています。


 農家11人中心に4団体が結成

 「自然の恵みを生かした土づくりにこだわっています。見栄えでなく、本当の味を知ってもらいたい。冬でも柔らかく、おいしい深谷ネギを味わってください」。冬場のネギの出荷で忙しい福島政治さん(52)もグループの一人。

 利根川の肥よくな土地を生かし、野菜作りに適した深谷市で、農の視点から食を考え、日本の食の将来のために行動を起こそうと、農家十一人が中心になり、農業や環境を考える四団体で二〇〇五年二月、食業を考える会を結成しました。

 食にかかわる仕事――「食業」に携わる人々が、生産から販売までの理想の流通システムや機能性の研究成果を消費者や流通業者に伝え、国内農業への理解を深めてもらうのがねらい。農家を中心に農協職員、料理店などが(1)食業に関する研究(2)農から食への情報発信(3)農産物の販売などの事業をめざしています。

消費者には“鮮度いい産地物”
農家には“安定した取引”

 その活動の一環として〇六年十一月に始まったのが、小田急百貨店新宿店など首都圏の五つの百貨店で、深谷の野菜を店頭販売する取り組みです。店舗販売に全面的に協力しているのは、全国に青果店舗を展開する株式会社九州屋。新宿店の小枝龍二店長は「農家の熱い思いを消費者に伝えたい」と理由を語ります。

 店頭での対面販売の効果がいい

 店頭販売では、野菜・果物の専門家=ベジタブル&フルーツ・ジュニアマイスターが週六日、対面販売で深谷の野菜をPR。深谷で農作業や加工体験を積んだマイスターの黒田祐子さんは「新鮮で安全な、おいしい野菜を広めたい。『おいしかった』とお客さんの声や要望も聞けて、農家と消費者を結ぶ架け橋の役割を果たしたい」と、対面販売の効果を強調します。

県が「会」の取り組み支援

 食業を考える会は、こうした販売活動を進めるために、埼玉県の「アグリベンチャーモデル経営集団支援事業」を活用。「産地間競争が激化し、販売単価も落ち込むなど、野菜を取り巻く状況が厳しくなっています。農業が成り立っていくために、高収益を上げる農業を実現したい」(県農林部農業支援課の上田健治主査)という趣旨のもと、(1)農産物の生産・加工について、革新的なアイデアや優れた技術力により、高付加価値化を実現する(2)農産物を通して環境に配慮する(3)農産物の斬新な流通・販売戦略に関する取り組みを支援する―ものです。

 〇五年から実施され、「食業を考える会」を含む三団体が対象になっています。〇六年度予算で三百万円を計上し、通信費、広告宣伝費などソフト経費が補助対象。同課の上田主査は「安全・安心なものを求める消費者ニーズに応えながら、安定的な取引を望む農家を支援したい」と、事業の充実を約束します。

 深谷野菜の価値訴え地域発展を

 「食業を考える会」の事務局責任者を務める山口一郎さん(埼玉産直センター専務理事)は「鮮度のいい野菜を、安全に消費者の元に届けるのが、本来の流通のあり方。深谷の野菜の価値を訴えながら、地域農業が発展し、後継者が育つような取り組みを続けたい」と展望しています。

(新聞「農民」2007.2.5付)
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2007年2月

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