ダイナミックな変革 ニカラグアでも
大統領に左翼政党のオルテガ氏
人口五百万人のうち七割以上が失業・半失業状態で、多くの国民が貧しさに苦しむ中米ニカラグア。十一月八日の大統領選で左翼政党のFSLN(サンディニスタ民族解放戦線)のダニエル・オルテガ氏が勝利。ボランティアで現地に住む福傳潔さん(農民連国際部の福傳さんの父親)が、選挙戦の様子などを伝えてくれました。
仕事と平和望む国民和解と統一で実現
投票日前の十一月五日、修理で家に来ていた大工の棟りょうが「ダニエルが勝ったらアメリカが黙っていない。また内戦になるだろうか」と質問してきました。「それはない。もう世界は変わっている。民主的な選挙で選ばれた大統領を覆す理由はない」と説明すると、安心した顔になりました。
投票日が近づくにつれ、ニカラグア支配層、富裕層の悲鳴に近い叫び声が大きくなってきました。「戦争になる」「キューバのようになる」「ダニエルは悪魔」―。有力なマスメディアがすさまじい反共宣伝、反オルテガ宣伝を流し、アメリカ大使館も、あからさまな内政干渉をしかけてきました。しかし、「これ以上どう悪くなるのか」「キューバはニカラグアよりひどいのか」と、八〇%以上の国民が貧困にあえいでいるなか、恐怖心をあおる保守勢力の宣伝はそれほど効果をあげなかったようです。
一方、FSLNは「ニカラグア・トゥリウンハ」というスローガンを掲げ、国内の全勢力の和解、国民的な勝利を成し遂げようと、反共宣伝への直接的な反論を避け、アメリカ支配からの離脱、新自由主義、競争至上主義経済との決別で貧困の解消、農業、国民経済の回復を訴えました。「われわれが望むのは仕事と平和、国民的な和解、統一で成し遂げよう」と、ラップ調のテーマ曲も登場し、効果的に選挙活動を行いました。
選挙は十一月八日、開票率九二%の段階で、FSLNのダニエル・オルテガ氏が三八・〇七%を得票して、二位の、アメリカが推すALN(自由ニカラグア同盟)のモンテ・アレグレ氏に九%の差をつけ見事に当選。得票率で三〇%以上、二位に五%以上の差をつけたため、決選投票を待たずに勝利を確定させました。
オルテガ氏は、一九七九年のサンディニスタ革命の後、八一年から再建委員会の議長、八四年からは大統領として内戦をたたかいました。今回、九〇年の大統領選挙で保守候補にその座を明け渡して以来、十六年ぶりの返り咲きです。五年間の任期中に徹底した民主主義の実践と国民が主人公の国への変革に成功するかどうか、その手腕が問われています。
いま、中南米はダイナミックな変革のとき。世界が大きく変わりつつある現場に居合わせていることに感謝しています。
ニカラグア、マナグアにて 福伝 潔
(新聞「農民」2006.11.27付)
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