食糧主権実現の運動は間違いなく前進している!
十月二十八日から十一月四日まで、ローマで食糧サミット十年後行動が行われ、農民連から真嶋良孝副会長と福傳活人国際部員が参加しました。行動の眼目は、三十、三十一日に開かれたFAO(国連食糧農業機関)の食糧安全保障委員会特別フォーラムを中心に、FAOが食糧主権実現の立場に立って飢餓根絶にとりくむよう働きかけること。食糧主権の正当性とビア・カンペシーナを含む各国NGOの存在感を大きく示したローマの行動をリポートします。
ローマ 食糧サミット10年後行動に参加して「やらせ」のタウン・ミーティングとは大違い特別フォーラムの目的は、FAOの本会議場(写真〈写真はありません〉)にNGOを招き、政府代表と対等の立場で、飢餓人口半減目標の達成状況と飢餓根絶の計画を議論することです。最初の半日はオープン・セレモニーで政府が主役でしたが、午後からは政府代表席が縮小されてNGO席が四分の一近くを占め、NGO席の筆頭は「農民・小農」、つまりビア・カンペシーナとそれに近い農民組織の席という配置です。しかも、三十日の発言が政府代表二に対してNGO側一という偏った運営だったため、ビア・カンペシーナが途中退席してこれに抗議。さらに三十一日朝にはFAOの玄関に段ボールで作った「食糧主権へのゲート」を置き、まわりを横断幕で囲い、種子やビア・カンペシーナ帽・バンダナを配って政府代表やFAOの幹部職員を出迎える行動を行いました。最初はギョッとしていた人たちも、笑顔で受け取り、「WTO」と書かれた段ボールを踏みつけてゲートをくぐる――なかなか創意あふれる行動でした。 結局、FAO側が非を認め、三十一日からは発言の比率がほぼ逆転しました。「やらせ」のタウン・ミーティングで「民意」を聞いたとごまかす日本政府のやり方とは大違いです。 二〇〇〇年に食健連と農民連が中心になって開いた「WTOに関する国際シンポジウム」にパネリストとして来日したアントニオ・オノラティ氏がNGOの元締めとしてFAOとの折衝にあたったことも印象的でした。
圧巻だったヘンリー・サラギ氏の発言特別フォーラムは、農地改革、貿易とグローバリゼーションなど、テーマごとにNGOと政府・研究機関からパネリストが報告し、その後会場から発言するというやり方で行われました。ビア・カンペシーナからは、ラファエル・アレグリア前代表とヘンリー・サラギ代表が報告。アレグリア氏の報告は時間が重なっていたため聞くことができませんでしたが、サラギ氏の発言は、かなりのスペースを割いて日本に言及したことを含め、圧巻でした。 彼は、日本農業が自国の食糧を十分にまかなう能力があるのに、大量輸入によって破壊され、このままでは三食のうち二食を輸入に依存せざるをえなくなることを厳しく批判しました。 そのうえで、世界中で農民同士が“死の競争”に追いやられている現実を告発し、「食糧と農業からWTOと国際通貨基金(IMF)、世界銀行を追い出し、改革されたFAOとUNCTAD(国連貿易開発会議)などに置き換えて」食糧主権を実現することを強く訴えました。 サラギ氏に感謝の言葉を述べると、彼は「世界第二位の経済力を持ちながら、交渉ではいつもアメリカの陰にいる日本を世界世論の批判にさらすべきだと考えた。日本政府は六〇%も輸入に頼る政策をとってきた責任をどう感じているのか。このままで済むはずがない」と語ってくれました。
農民連もフロアから発言農民連もフロアから発言しました。時間はわずか三分。米価暴落の現実と、人口二%の日本が世界貿易量の一〇%を輸入していることの不公正さを指摘し、食糧主権の実現を強く訴えました。日本政府代表は農民連の英語の発言を必死にメモしていたとのこと。日本語の原稿があるはずなのに、農民連代表に連絡もとらず、英語の発言をメモしていることに異様さを感じたという人が教えてくれました。 農民連の発言といい、サラギ氏の報告といい、FAOの本会議場で、日本の農業破壊政策が二回も糾弾されたことは、さぞや驚きだったでしょう。
食糧主権実現を求める世界の仲間が一堂にローマ行動で感慨深かったのは、食糧主権を求めてたたかってきた人たちが一堂に会したことでした。ビア・カンペシーナからは約四十人、NGOを含めて約百人が“合宿”して朝から晩まで綿密な討論を行い、FAOに働きかけました。ビア・カンペシーナは二人の代表の報告を検討するチームや行動計画を具体化するチームなどに分かれて討論と準備を行い、遅い夕食の後は歌とワインやテキーラでじっくり交流を深めました。
食糧主権こそが飢餓を根絶する道食糧安全保障委員会はアメリカやEUの妨害によって、飢餓とのたたかい、とくに農地改革推進を監視するFAOの役割を強化するための実質的な結論も勧告も出さないまま終わりました。アメリカや多国籍企業の圧力に屈しているFAOの限界を象徴しています。しかし、飢餓人口は毎年三百万ずつ増えています。ジャック・ディウフFAO事務局長は「このままでは目標は達成できない。これは恥ずべきことだ」と述べ、ビア・カンペシーナ代表に対し、来年二月の「世界食糧主権フォーラム」に参加できないことに遺憾の意を表しました。 フォーラムの受入国・マリは食糧主権を農業法の基本原理にし、イタリア政府などもFAOの方針に食糧主権を盛り込むことを主張しています。 行動の中間総括でサラギ氏は「食糧主権の立場を粘り強く説明することが大事だ。食糧主権こそが飢餓と貧困を解決する道だと世界が気づく日は必ず来る。来年二月のフォーラムを成功させ、食糧主権を実現する広い連帯と強い組織を作ろう」と呼びかけました。 日本でも、食糧主権を粘り強く訴え、広い連帯と強い組織を作ることが大切だと実感しました。
農民連第17回定期大会のご案内1月15日(月)午後1時30分〜17日(水)正午 (新聞「農民」2006.11.20付)
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[2006年11月]
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