シリーズ
私の食料主権宣言
理論・運動さらに発展させ
この「主権」の内実を豊かに
全大阪消費者団体連絡会事務局長 飯田 秀男
農家が意欲もって再生産できるよう
自由貿易主義を旨とするWTO(世界貿易機関)が、発足十一年目にして完全に行き詰まっている。なかでも、農産物の輸出入をめぐるルール作りは閉塞(へいそく)状態に陥っている。追いつめたのは世界の民衆(農民・消費者)と発展途上国の運動であり、断罪されたのは輸出大国・多国籍企業の横暴である。
この間の経緯をみると、WTOが推し進める貿易ルールが、各国の農業生産を支えようとする家族農業・小規模農業を破壊し、農産物をビジネスの対象としかみない輩(やから)の利益を擁護するものであることを、年を追うごとにはっきりさせてきた。
二〇〇三年のメキシコ・カンクンWTO閣僚会議が決裂したのに続き、昨年十二月の香港閣僚会議は挫折をした。その後、輸出大国・多国籍企業等が修復を試みたものの、WTOの機能不全状態を確認したに過ぎなかった。
私たちは、今こそ食糧主権の旗を高く掲げて、WTOに替わるルールを作る必要がある。農民連が発表した食糧主権宣言(案)は、まさに時宜にかなったものである。宣言(案)には、「食糧主権には、国民が自国の食糧・農業政策を決定する国民主権と、多国籍企業や大国、国際機関の横暴を各国が規制する国家主権の両方が含まれている」とある。
だとすれば、私たちの運動は、(1)今の日本の農業・食糧政策を転換して全ての農家が意欲をもって再生産ができるようになり、消費者と生産者がさらに手を携えて日本農業を支えるしくみを作ること(2)輸出大国・多国籍企業の思いのままにさせない貿易ルールを作るために交渉をすすめるよう、日本政府を食糧主権の立場に立たせること―が必要になってくる。
国際的な連帯行動さらに強めて…
こうした運動は、国際的な連帯行動なくしては成り立たない。ビア・カンペシーナに加盟する農民連は日本の内外で活躍できる条件を備えているといえる。私たちには、宣言(案)をさらに理論的にも運動的にも深め、内外の諸団体・有識者との議論を重ね、食糧主権の内実を豊かにしていく責任がある。その困難の突破なくして、食糧主権の確立はない。
(新聞「農民」2006.11.6付)
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