「農民」記事データベース20061106-755-01

農民連食品分析センター

新しい分析機器導入

ガスクロマトグラフ質量分析計

関連/農家に活用呼びかけたい

 移転してスペースも広くなった農民連食品分析センターに新しい分析機器が設置されました。残留農薬を規制するポジティブリスト制に対応したガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所)。いま本格稼動に向けて準備を進めています。


食の安全・安心守る最高水準の機器

 ガスクロマトグラフ質量分析計は、環境や食品に残留する有害化学成分を、微量であっても正確に測定することができる最新鋭の分析機器。分析できる農薬の種類が増え、今まで百二十八だったものが二百四十〜二百五十と倍に。分析の精度も格段に上がり、どんな農薬が入っているのか、正確に早く識別できます。

 受け付けは少しあと

 現在、農薬を正しく取り出して検査できるかどうか、稼動に向けて調整中。ポジティブリスト制に対応した形での分析の受け付けは、もう少し先になります。

 分析センターが呼びかけている「新機器導入と施設移転・拡充のための二千万円募金」は現在、一千百万円になりました。

 石黒昌孝所長は「国民の食の安全・安心を守るための最高水準の分析機器です。みなさんのカンパやご支援に支えられて導入することができました。機能をフルに活用して、みなさんの期待に応えたいと思います。二千万円募金達成のため全国のみなさんのご協力をお願いします」と呼びかけています。


 募金の振込先 郵便振替口座 00160―6―773542「農民運動全国連合会分析センター」まで


ポジティブリスト制

基準以上の違反が相次ぐ
農薬飛散の不安と混乱も

センターの役割ますます重要に

 五月末の実施から半年になろうとするポジティブリスト制。同制度は(1)約八百の農薬に残留基準を設ける(2)残留基準が設定されていないものは一律〇・〇一ppmを残留基準とする(3)残留基準を超えたものは流通を禁止する―ことを内容とし、残留農薬を厳しく規制するものです。

 制度実施後、最初に違反が見つかったのは、六月上旬の中国産スナップエンドウでした。基準値〇・〇一ppmにたいして〇・〇六ppmと六倍もの農薬が検出されたのです。その影響で、中国からのスナップエンドウの輸入量が大幅に減り、対前年同期比で一八%まで落ち込みました。

 その後、生シイタケ、ニンニクの芽、マツタケ、ネギなど中国産野菜から基準値を超える残留農薬が次々と見つかり、タイ、台湾、ベトナムなどの野菜、果物からも違反が相次ぎました(表)。これによって、輸入野菜の販売を手控える業界の動きも活発になっています。

 
輸入食品違反事例(ポジティブリスト制実施後)
輸入食品名
輸出国
検出農薬
濃度( )は基準値
スナップエンドウ
中国
フルシラゾール 0.06ppm(0.01ppm)
冷凍サヤエンドウ
中国
クロルピリホス 0.02ppm(0.01ppm)
生鮮シイタケ 2件
中国
フェンプロパトリン 0.03〜0.06ppm(0.01ppm)
生鮮青ネギ 2件
中国
テブフェノジド 0.03〜0.05ppm(0.01ppm)
生鮮マンゴー 13件
台湾
シフルトリン 0.05〜0.07ppm(0.02ppm)
生鮮シカクマメ 2件
タイ
EPN 0.08〜0.52ppm(0.01ppm)

 同時に、ポジティブリスト制の最大の問題点は、輸入量の多い小麦や大豆などの残留基準を緩く設定し、輸入しやすくしていることです。小麦の農薬クロルピリホスメチルの基準値は一〇ppm。アメリカ六ppm、欧州三ppmに比較しても緩く、日本人の主食である玄米の基準〇・一ppmの百倍も緩和しています。遺伝子組み換え大豆の作付けが圧倒的なアメリカから輸入される除草剤耐性大豆も、農薬グリホサートの基準が二〇ppmと、玄米の二百倍になっています。

 ポジティブリスト制の改善・充実とともに、国民共同の食の安全を守る砦(とりで)として発展してきた食品分析センターの役割はますます重要になっています。

 一方、ポジティブリスト制をめぐって、国内では八月、新潟県に出荷された北海道産のカボチャから、三十年前に製造・販売が禁止された有機塩素系殺虫剤の農薬「ヘプタクロル」が基準値を超えて検出されました。土壌内に残留していたものが、カボチャに浸透したとみられています。分析センターも、北海道の農民連会員から送られてきたカボチャを検査。基準値以下だったことから、安全性が証明されました。

 また農村の現場では、隣の畑への「飛散」の心配から、農薬散布をためらうなど、制度をめぐって不安と混乱を招いています。地域の作付けに合った病害虫の防除計画を作るとともに、農地が隣接する農家同士が話し合い、飛散防止対策などを具体化する地域の取り組みも各地で始まっています。飛散の状況を検証し、有効な防止対策を講じる上でも、分析センターの機能が生かされています。


農家に活用呼びかけたい

茨城県農民連女性部(ゆいの会)
新事務所を訪問

 茨城県農民連女性部(ゆいの会)は十月十四日、病体生理研究所(東京都板橋区)内の新分析センターを移転後初めて訪問。女性部会員をはじめ、農家のお父ちゃんや単組の役員ら、貸し切りバスで四十人が見学しました。

 「広くなったねー」。見学者は分析センターに入るなり、驚きの声。案内した八田純人主任研究員が、残留農薬検出や遺伝子組み換え作物の摘発で、世論を大きく動かしてきた分析センターの実績を紹介しました。

 導入後間もないガスクロマトグラフ質量分析計についても説明。質問にも丁寧に答えた八田主任は「残留農薬や遺伝子組み換えの問題でも、国産のものが一番安全。農家のみなさんは自信を持って生産に取り組んでください」と激励しました。

 小美玉市の米農家、柴崎英子さんは「前のセンターは狭く、身動きができなかったが、広くなっていい。消費者に安心して食べてもらうためにも、私たちのカンパで設置された新しい機器を活用し、生産に励みたい」と目を輝かせていました。

 常陸野農民センター事務局の内田礼子さんは「みんなのカンパでここまで実現できたのはすごいことです。新分析機器の活用を、農家にもっと呼びかけたい」と感慨深そうに話していました。

(新聞「農民」2006.11.6付)
ライン

2006年11月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-22249

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2006, 農民運動全国連合会