「農民」記事データベース20061009-751-08

実りの秋というのに
歯止めかからぬ米安売り、なぜ!?(2/2)

増え続ける輸入米…値段は市場まかせ
政府の責任放棄こそ元凶

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倉庫に眠る輸入米(ミニマム・アクセス米)を
食い物にする流通業界、官僚たち

 義務でもないミニマム・アクセス米(MA米)を輸入し続ける農水省。一番喜んでいるのは、倉庫・物流系企業と、その企業に天下る農水省の役人です。

 一九九五年度から輸入を始めたMA米の数量は七百二十三万トン。そのうち二百三万トンにのぼる在庫の倉庫保管にかかる経費は、年間約二百億円余りにもなります。この在庫を引き受けているのが、「社団法人・全国食糧保管協会」に加盟する六百の倉庫・物流企業で、MA米の在庫量が増えれば増えるほど、“ご利益”が増える構図です。

 たとえば、日本通運鹿児島支店では、「MA米の基地として、倉庫の低温機能を充実させ、誘致数量も増やせる」と期待をにじませています。今年四月には、三年ぶりに北海道・室蘭港に「日の丸」が付いた三十キロの小袋に詰められたMA米が六千トン陸揚げされ、日本通運の米倉庫に保管されました。「港関係者は、官民あげて輸入促進に努めた」と地元紙が報道しています。

 さらに驚いたことに、この全国食糧保管協会には農水省の役人が多数天下っています。専務理事の羽場氏は、食糧庁検査課長、東京食糧事務所長の経歴の持ち主。常務理事の杉氏は横浜食糧事務所長。もう一人の常務、石坂氏も前歴は北海道農政事務所長です。また、参与や顧問、調査役として倉庫・物流企業に再就職している農水省の役人もいます。

 農家にとっては米価暴落の火付け役、国民全体にとっても税金の無駄づかいでしかないMA米。これにむらがり、甘い汁を吸っているのが、農水省の一部の高級官僚なのです。


農家にも「最賃制」保障を

全労連・全国一般労組東京地本副委員長 梶哲宏さん

 稲作農民の日給が労働者の最低賃金の半分という結果は、米作りを続けることが大変困難な現状を示しています。米作り農家が採算可能な価格で、政府が買い上げるしくみを確立することが必要です。米の価格保障を要求する立場から、米価の算定に際して、農家の自家労賃を、少なくとも労働者の最賃を基礎にすえることを求めます。農家が汗を流した労働にたいして、せめて都市労働者の最賃以上の自家労賃を保障するのは、当たり前のことです。

 さらにより安全な、おいしい米作りを行おうとすると、熟練した労働が加わります。そうした農家には、最賃以上の熟練度を反映させた労賃が保障されなければなりません。私たちは、ナショナル・ミニマム(国民生活の最低限の保障)を要求する立場から、全国一律最賃制を確立し、これをベースにして農産物の生産コストを保障する制度を、農民とともに求めていきたい。


政府は価格安定緊急策とれ

農民連ふるさとネットワーク事務局次長 横山昭三さん

 不作が予想されていながら、価格は新米から「一段下げ」の状況が続き、農家は悲鳴を上げています。米業者の間からも行き過ぎた米ビジネスに対する批判や価格の安定を求める声が上がっています。

 米価回復の緊急対策として、政府は、二百万トン程度の備蓄米を生産費を保障する価格で買い上げるべきです。国民は不作になっても輸入米を食べずにすみます。米不足や価格高騰時には放出するなどすれば需給も価格も安定します。

 また、国内では四割もの減反を押し付けながら輸入を続けるミニマム・アクセス米制度は直ちにやめるべきです。

 農家は大手業者の米ビジネスの下では米を作り続けられません。今、国産の米を守るためには、消費者や中小業者に作る農家の顔が見える米を届ける“もうひとつの流れ”、産直や準産直米の取り組みを大きく広げることが求められています。

(新聞「農民」2006.10.9付)
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2006年10月

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