「農民」記事データベース20061009-751-07

実りの秋というのに
歯止めかからぬ米安売り、なぜ!?(1/2)

増え続ける輸入米…値段は市場まかせ
政府の責任放棄こそ元凶

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10キロ2980円(スーパー価格)、農家の時給なんと三百三十円!!

 「福井県産華越前 十キロ二千九百八十円」「新潟こしひかり 五キロ千八百八十円」―。大手スーパーなどで繰り広げられる新米のバーゲンセール。米価暴落の原因の一つは、米価にたいする政府の責任放棄。国民の主食を市場任せでは、いつまでたっても暴落に歯止めがかかりません。

 米価は、全国農業協同組合(全農)等が上場して、卸業者等が落札する、米価格センターの入札価格が一つの指標になります。二〇〇五年産米の平均落札価格は一俵(六十キロ)一万五千百二十八円。二年連続の下落です。

 センターは、政府の指導で、〇六年産から毎週入札を実施するとともにさまざまな取引方法をとり入れ“活性化”を図りました。しかし、主力銘柄が出そろった九月二十七日の入札でも落札率が一三・八%にとどまり低調な取引が続いています。新ルールでも入札が低迷しているのは、全農が大手卸や外食、コンビニなどの業界との相対取引を重視しているからです。

 また政府は今年から、政府備蓄米を米価格センターの落札実績で購入することにしました。これは、センターの入札で売り手が値を下げず、落札されない産地の米は買わないということ。政府自身が産地に「入札でもっと安くしろ」と迫っているようなものです。

米価が暴落し、稲作農家の日給は大幅にダウン 全農は「価格政策は、業態(外食、コンビニ弁当など)・協力度・スケール(数量 など)に応じて設定」(改革方針)するとしており、入札以外の個別対応を強化。相手業者の規模や扱い量 で価格を決める相対契約方式で、大手を中心にした価格引き下げの構造になっています。

 一方、米一俵あたりの農家の生産費は、〇五年産米で一万六千七百五十円。入札価格は、それを大きく下回り、労働に見合う米価になっていません。さらに生産費の中の労働費を日給に換算すると、二千六百四十七円。労働者の最低賃金(五千三百四十四円)の半分以下という状況です。米価暴落の重圧に農家は苦しんでいます。


外米だぶつき、国産米減る

このままでは “米パニック”再来は必至

減る国産米在庫 増える輸入米在庫 米価暴落のもう一つの原因は、増え続ける外米の輸入。国産米は余っているどころか、逆に足りないくらいなのに、米価が暴落するという構造になっているのです。

 輸入米の在庫は年々増えつづけ、ことし三月末には二百三万トンに。一方、国産米の持ち越し在庫は〇五年十月末でマイナス二十四万トンでした。

 現実には八月から新米が採れ始めるので、国産米不足は表面化しませんが、“早食い”してなんとか均衡を保っている状態なのです。

 それでは、作柄がよくないと伝えられる今年はどうか―。農水省の発表によると、今年六月末の米の在庫量は、官民合わせて二百六十万トン。国民全体の一日あたりの米消費量は二万三千トン程度ですから、十月二十一日には在庫がゼロに。十月末には二十三万トンの不足になる計算です。ひとたび米不足になれば、米パニックの再来は必至――これが日本の米をめぐる真の姿なのです。

 今年の五月以降、一部の銘柄が不足し、価格が急騰する場面がありました。

 こうしたときに、政府は、備蓄用の古米を売りに出し、当初の計画十万トンを大きく上回る十二万二千トンも売りさばきました(表)。その六割は七〜八年前の超古米で、価格はなんと六十キロあたり六千七百円〜七千八百円。おそらく外食、中食業者に流れたのでしょうが、米価の暴落に拍車をかけたことは間違いなく、さらに米全体の消費を落とすことにも一役買ったのではないでしょうか。

売りすぎた政府米 05年7月〜06年6月計画 10万トン→実績12万トン
年産
売却数(万トン)
単価/60キロ
9
0.4
6,609
10
2.2
7,346〜6,748
11
5.3
7,831〜7,404
12
0.1
13
10,832
14
15
1.2
12,765〜12,187
16
3.0
12,305〜11,676
合計
12.2

 

(新聞「農民」2006.10.9付)
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2006年10月

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