アメリカ・中国から大量輸入している日本
GM米 アメリカ・ヨーロッパに流通
私たちの食卓は大丈夫?
関連/米ドキュメンタリー映画「食の未来」
アメリカで未承認の遺伝子組み換え(GM)米が流通していたのに続き、ヨーロッパでも中国産食品のGM米混入の発表がありました。アメリカ、中国からも米を輸入している日本。私たちの食卓は大丈夫でしょうか?
除草剤にも枯れない アメリカ
食べた虫が死ぬ殺虫性 中 国
安全性が確認されないGM食品
安全性評価も販売承認もなしに
アメリカは八月十八日、ドイツのバイエル・クロップサイエンス社の未承認GM稲「LLライス601」が一般の米に混じって流通したと発表。LLライス601は、除草剤バスタをまいても枯れない稲で、長粒種(インディカ米)として開発。一九九八年から二〇〇一年にかけて野外実験が行われたものの、安全性評価も販売承認も行われておらず、未承認で流通は許されていません。
日本は、アメリカから長粒種の玄米や精米は輸入していないものの、米粉など加工品は約三万トン輸入しており、そのチェック体制はありません。この問題で、日本製粉は三十一日、アメリカから輸入した原料用雑穀のなかに長粒種米を砕いたものが約七%含まれていたとして、この原料を使った製品の出荷を停止しました。ヨーロッパでは、アメリカ産長粒種からLLライス601が検出され、欧州委員会は、輸入停止措置をとりました。
また国際環境団体グリーンピースは九月五日、フランス、ドイツ、イギリスで売られていたビーフンなど中国産食品にGM米の混入があったと発表。これは殺虫性をもつBt稲で、中国でも認可されていないものです。
米加工品の輸入年々増えている
相次ぐ、GM米混入事件。農水省は、アメリカ産長粒種米の問題では、輸入停止を指示し、加工・販売を禁止しました。しかし中国産GM米については「早急に情報が来るものと期待している」(中川昭一農水相)と及び腰です。韓国政府が即座に、中国産の米と米加工品について、検査を急いだのとは対照的です。
日本は、WTO協定によってミニマムアクセス(MA)米の輸入が押しつけられ、九五年以降七百五十五万トン(年間七十七万トン)を輸入してきました。そのうちアメリカ産は三百万トン以上、中国産は八十万トン以上にのぼります。中国産MA米については、昨年から検疫所でGM検査をしていますが、それ以外の輸入米や米加工品については検査体制がありません。
とくに米加工品の輸入は年々増え、海外で米を粉状にし、他の材料をミックスした米粉調整品が十二万トン、米菓九千トン、ビーフン六千トンなど。アメリカ、中国からそれぞれ約三万トン入っています。
千葉県匝瑳(そうさ)市のこめ工房「野楽里(のらり)」で、米粉パンなどを作る佐藤郁子さんは「目に見え、出所がわかるものを作って販売するのが当たり前。GM食品なんて食べさせたくない。地元の米を使った料理を伝えたい」と地元産のよさをアピールします。
主食の米にまで汚染が進行とは
いま国内では、GMイネの栽培実験が東北大学(宮城県大崎市)、北陸研究センター(新潟県上越市)、農業生物資源研究所(茨城県つくば市)の三カ所で行われ、大崎、上越両市は野外実験です。野外栽培の場合、周辺の非組み換え稲との交雑が起こり、汚染が広がるほか、生物の生態系にも悪影響を及ぼしかねません。
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンの天笠啓祐代表は「五年前に栽培を停止したLLライス601の混入事件は、もし混入がその実験に起因したものであれば、GM作物がいったん栽培されると、コントロール不能に陥ることを示しています。開発が進めば進むほど、こうした事件が頻発し、安全性が確認されないGM食品が食卓にのぼることになります」と警鐘を鳴らします。キャンペーンは、GM作物開発をいったん凍結し、国内開発・輸入の際の、実験段階も含めたチェック体制の抜本的見直しを求めています。
農民連食品分析センターの石黒昌孝所長は「主食の米にまでGM汚染が進行しつつあることが明らかになりました。アメリカでは、承認済みのGM米が流通しており、外国から米を多く輸入している日本の食卓が心配です。MA米制度を廃止し、食料自給率を上げることが必要。大多数の農家を切り捨てる品目横断対策をやめ、異常に低い米価を引き上げることで、農家が安心して米作りができる施策が求められます」と指摘します。
米ドキュメンタリー映画「食の未来」
日本有機農業研究会が試写会
日本有機農業研究会は、アメリカで一昨年公開されたドキュメンタリー映画「The Future of Food」(邦題「食の未来―決めるのはあなた」)の日本語吹替版(写真)を製作し、九月七日、都内で試写会を開きました。
この映画は、遺伝子組み換え作物の危険性をさまざまな角度からわかりやすく、また切実に訴える作品です。遺伝子組み換え作物の環境や生命、健康への悪影響を証言する生産者、消費者、科学者。世界で八億五千万人の人々が飢餓で苦しむ一方で、遺伝子組み換え技術を特許化、私物化し、金もうけに走る企業――。見る者に衝撃的な事実を伝えます。
また、この映画は、自然に逆らわない持続可能な農業を打開策としてとらえ、民衆の力で変えていこうと訴えています。
製作協力者の一人、食政策センタービジョン21の主催者で日本有機農業研究会理事の安田節子さんは、「食を自分たちの手で守るため、一人ひとりが声をあげていくことが大切です。大いに普及してほしい」と語っていました。
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日本語吹替版DVDのお問い合わせは、日本有機農業研究会事務局 Tel03(3818)3078 Eメール future-of-food@yuki-sagami.net
(新聞「農民」2006.9.25付)
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