「農民」記事データベース20060911-747-08

食品分析センター10年の歩み

残留農薬・添加物…危険な食品、次つぎ告発

国民の食卓の「守護神」の役割

関連/学校給食パンからも農薬


正確な検証、マスコミも注目

 残留農薬、遺伝子組み換え、食品添加物……。農民連食品分析センターはこの十年間、多くの人に支えられながら、食の安全、国民の健康を守り、行政を動かしてきました。今後も食の安全を願う国民共同の財産として歩みを進めます。

 スタート

 一九九五年に発足したWTOによって、貿易の自由化が進み、農産物輸入が激増、食品の安全基準が大幅に緩和されたのです。これにたいし農民連は、食の安全と国民の健康を守るために、食品分析センターの設立を決定。九六年五月二十日、農民連会員や食の安全を願う広範な人々の支援と募金によってオープンしました。発足当初は、少ない分析機器と人員でのスタートでした。

 九八年に二度目の大がかりな募金によって、ECD型ガスクロマトグラフを導入。塩素系農薬の分析が可能になり、九九年には遺伝子組み換え分析機器を購入しました。二〇〇三年に三度目の募金を呼びかけ、重金属を分析するための原子吸光光度計を設置し、スタッフも増員しました。

 大反響

 この十年間、分析の依頼も増え、一万一千件を超える分析を行ってきました。輸入野菜の残留農薬の分析結果はマスコミの注目を浴び、行政にも影響を与え、食の安全を守る上で、大きな役割を果たしました。

衝撃!!中国産冷凍ホウレンソウから農薬

ついに行政も腰上げた

冷凍ホウレンソウの輸入実績と相手国 〇二年、中国産冷凍ホウレンソウを分析し、残留農薬を発見。厚生労働省は当初、冷凍野菜は基準値がないからと無視する態度をとりましたが、生鮮野菜と同じ基準でやるべきだと追及。厚労省もついに冷凍野菜の検査を指示したところ、次々と違反が見つかり、一〇〇%検査と輸入自粛を決めたため、中国からの輸入はストップ。輸入ホウレンソウは激減しました。(グラフ)

 これを契機にして違反が続くときには輸入禁止措置をとれるよう食品衛生法を改正(二〇〇二年)。輸入冷凍エダマメやエンドウなども規制されました。中国産冷凍野菜の残留農薬事件はテレビでも取り上げられ、社会現象になりました。

 〇六年七月に出版された『中国野菜企業の輸出戦略』(坂爪浩史・朴紅・坂下明彦編著、筑波書房)は、分析センターの活躍を次のように紹介しています。

 「残留農薬の問題が、事件として表面化したのは二〇〇二年であるが、実は二〇〇〇年十二月に農民連の検査センターで、冷凍ホウレンソウなど中国産ブランチング(生ゆで)野菜から高濃度の残留農薬が検出されていた。しかし、当時は冷凍野菜に関する基準がないという理由で厚生労働省も対応せず、表面化することはなかった。農民連検査センターは二〇〇二年二月、再び検査をして同様に残留農薬を検出、それが報道されたことにより、一気に社会問題として噴出することになったのである」

 続々成果

 輸入漢方薬から農薬を検出し、厚生労働省にチェックを要請。厚労省は漢方生薬製剤協会に農薬についてチェックするよう申し入れ、指導すると回答しました。

 ベビーフードを分析し、ホウレンソウとグリーンピースの粉から違反農薬を発見、回収を要請しました。厚労省が独自調査を行い、農薬の存在を認め、善処を約束。ベビーフード会社が原料を国産無農薬に切り替えることで解決しました。

 横浜市の中学校に設置された自動販売機のパンとカレーライスを分析。双方から農薬が発見され、新婦人が販売中止を要求し、自販機を撤去させました。また各県から学校給食パンの検査依頼があり、輸入小麦使用のパンからは農薬が検出されました。新婦人とともに、農薬のない国産小麦に切り替える運動が進められています。

 違法摘発

 「遺伝子組み換え大豆を使用しておりません」の表示のある豆腐七種類のうち三種類から遺伝子組み換えを検出。非遺伝子組み換えと表示の実態を告発し、国産大豆の自給率を向上させる運動の契機になりました。

 ほとんどを輸入に依存している竹製割りばしから漂白剤の二酸化硫黄、防カビ剤を検出。厚労省に安全基準を作らせました。また期限切れの食肉に鮮度保持剤を加え、肉色をよくする悪質な事例を告発。これを機に保健所が摘発しました。

 JRの子会社がアメリカから輸入している冷凍弁当「オーベントー」の肉・魚の割合が二〇%以下で関税法違反であることを確認。財務省関税局に未調整品として追徴課税させました。さらに全面検査を指示させました。

 前進めざし

 BSE、農薬、添加物、遺伝子組み換え、アレルギーなど食の安全について、国民の関心が高まっています。食の安全と健康を守る情報の発信拠点として、運動の前進に役立つようがんばります。

 今後、約八百種類の農薬、動物医薬品、飼料添加物を分析できるガスクロマトグラフ質量分析計を導入すれば、ポジティブリスト制に対応し、分析のうえで大きな役割を発揮できます。現在「新機器導入と施設移転・拡充のための二千万円募金」を呼びかけ、募金は一千万円を超えました。引き続き、募金へのご協力をお願いします。

 募金の振込先 郵便振替口座 00160―6―773542「農民運動全国連合会分析センター」まで


学校給食パンからも農薬

北海道 十勝産小麦使用実現させる

 北海道・十勝地方の学校給食のパンを、二〇〇三年に分析センターで分析したところ、農薬が検出されました。

 十勝管内の市町村で、新婦人と農民連が、分析結果をもって教育委員会交渉を行い、議会でも取り上げられるなか、以後、十勝産の小麦で作ることを約束。ことし四月からは十勝管内十二市町村の小中学校で、十勝産小麦のパンが実現しました。

(新聞「農民」2006.9.11付)
ライン

2006年9月

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