品目横断対策で百万円減収北海道畑作地帯
“農水省にだまされた”農家から広がる怒りの声「品目横断対策で約百万円の減収になる。農水省にだまされた」――。北海道の畑作地帯でこんな怒りの声が広がっています。小麦や大豆、テンサイ、でんぷん原料用ジャガイモの四作物を大規模に輪作する北海道の畑作経営。農水省が進める「品目横断的経営安定対策」は、こうした経営を対象にした対策と言っても過言ではありません。しかしその北海道で、「現行の対策と同水準の支援を確保した」とうそぶく農水省や自民党とは正反対の評価が、農家からあがっています。
麦作試算してみると…農水省は八月七日、品目横断対策の生産条件不利補正(ゲタ)交付金の面積単価と数量単価を公表しました。ゲタ交付金は、現行の麦作経営安定資金や大豆交付金に代わるもの。公表された単価をもとに十勝地方・芽室町の小麦を例に支援水準を試算し、現行の対策と比較すると――(表)。〈ゲタ交付金〉 ゲタ交付金の面積単価は、市町村ごと、作物別に異なります。芽室町の秋まき小麦の面積単価は全国一高く、十アール当たり三万八千四百六十四円。また、数量単価は全国一律で、秋まき小麦(1等Aランク)は六十キロ当たり二千百十円。これに芽室町の平均単収五百三十八キロをかけて、面積単価を足した五万七千三百八十四円(十アール)が、品目横断対策の支援水準になります。
10アール四千円以上の減収〈麦作経営安定資金〉一方、〇六年産の麦作経営安定資金(1等Aランク)は、六十キロ当たり六千八百八十円(品質向上対策分込み)。これに平均単収をかけた現行の支援水準は、六万一千六百九十円です。 つまり、品目横断対策への移行によって、十アール当たり六万一千円から五万七千円へ、四千円以上も減少するのです。芽室町の平均耕作面積は二十五ヘクタールですから、試算のうえでも百万円以上の減収になります(小麦だけを作付しているわけではありませんが、小麦と他の作物の支援水準に差を設ければ輪作体系そのものを壊すことになります)。 さらに、北海道農民連の野呂光夫書記長はもう一つ問題を指摘します。北海道には大別して、秋まき、春まきの二種類の小麦がありますが、春まきへの支援単価は、秋まきの三分の二から半分以下なのです。 春まきはタンパク質の含有量が多く、パンの原料に適しており、ポストハーベスト農薬が残留する輸入小麦に代わる、安全・安心なパン用小麦として人気があります。しかし、収穫期の長雨などによって収量が低く、需要に生産が追いつかない状況です。
“農業つぶし”浮き彫り農水省は口を開けば「需要に見合った生産」が必要だと言ってきました。その一方で、春まき小麦の支援水準を低く設定するのは、まさに本末転倒です。これまでどちらかと言えば、経営規模の小さい都府県で、農家を選別する品目横断対策の矛盾が顕著になっていました。しかしここに来て、対策の“本丸”ともいえる北海道でも急速に幻想がなくなってきており、“日本農業つぶし”という同対策の正体が早くも浮きぼりになっています。
「食糧主権」で学習会群馬 活発な質疑討論群馬県農民連は八月十八日、全国連の笹渡義夫事務局長を講師に迎え、「食糧主権宣言学習会」を開きました。県連は、「食糧主権」の大きな世論をつくるためには“話せる人”をたくさんつくる必要があると話し合い、学習会を計画。十八人が参加しました。(写真〈写真はありません〉)笹渡さんは、なぜ「食糧主権宣言(案)」を発表したのか、「食糧主権」とは何か、人口二%の日本が世界の食料貿易量の一〇%を買いあさる不公正や「品目横断対策」の矛盾などをわかりやすく解説。日本政府を「食糧主権」に向き合わせ、食料自給率を向上させる運動の重要性を訴え、その実現にむけて農民連の会員と新聞「農民」の読者を増やそうと呼びかけました。 質疑討論では、西毛農民連が「食糧主権宣言(案)」への支持を広げる運動に取り組み、JAだけでなく初めて自治体も訪問した経験を報告。また、富士見村議会では、国に「品目横断対策の中止を求める」意見書をあげ、地産地消を進めていることなどが紹介されました。最後に、長沢尚県連会長が、「これを機に各地で学習会を開き、新聞『農民』やブックレットの普及と仲間づくりを思いきって展開しよう」と訴えました。 (群馬県農民連 目黒美奈子)
(新聞「農民」2006.9.11付)
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[2006年9月]
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