安全・安心、本物の味を消費者に届けたい(1/2)
美味しさのヒミツは国産の食材
「ぎょうざの満洲」←→ほくほく産直秋田
“顔の見える”うまい米を供給
「ぎょうざの満洲」は埼玉、東京に四十九店舗を構える外食チェーン。人気の自家製ぎょうざに使うキャベツや豚肉、そしてお米などの食材を国産でまかなっています。農民連の「ほくほく産直秋田」は昨年から有機肥料で生産したあきたこまちを「ぎょうざの満洲」に納めています。二年目を迎え、作る農家と“本物”を消費者に届ける「ぎょうざの満洲」との「顔の見える関係」が、ますます深まっています。
「農家と共に…」
農民連ふるさとネットワークを通じて、「ぎょうざの満洲」と「ほくほく産直秋田」、それに米卸が間に入って三者契約を結んだのは昨年六月。「ぎょうざの満洲」は生産費にほぼ見合う米価を、農家は“味も安全も裏切らないお米”の供給を約束。田植え前の四月に産地を訪れた「ぎょうざの満洲」と農家が酒を酌み交わし、お互いの思いをよく理解したうえで結んだ契約でした。
「ぎょうざの満洲」のホームページには、「農家と共に美味しさを探す」と題して、産地の田んぼや生産者の顔写真、産地から届いた手紙も載っています。「農家と共に…」という言葉に、国産の食材にこだわり、生産費に見合う米価を保障する「ぎょうざの満洲」の思いが込められています。
「十年、二十年とまじめに作ってくれる農家を探していました。そんな農家の思いを伝えたい」と、池野谷ひろみ社長。創業者で父親の金子梅吉会長と二人三脚で会社をもり立てます。
「三割うまい」
同社の創業以来のモットーは「三割うまい」。何が三割かというと、「原材料費、人件費、その他経費が売り上げに対して三割ずつ」という意味だそうです。原材料費が売り上げの三割というのは、この業界では抜群に高い数字です。
「私自身、普通の主婦なので、家庭の食卓の延長線上にあるような料理を出したい」と池野谷社長。自慢のぎょうざは保存料をいっさい使わず、そのかわりに製造から配送、販売に至るまで温度管理を徹底し、作りたてのおいしさを保っています。
身元がはっきりした国産の食材と「もっといいものをつくりたい」というこだわりが、「ぎょうざの満洲」の“おいしさの秘密”です。
有機・減農薬で
「ぎょうざの満洲」に納める農民連のお米のふるさとは東に奥羽山脈がそびえる穀倉地帯の仙北平野。山から流れ出る豊富な清水がおいしいあきたこまちをはぐくみます。
それと、もう一つの“おいしさの秘密”は、有機肥料を使い、減農薬・減化学肥料で栽培していること。昨年は十一人の農家が約千五百俵(60キロ)のお米を納めました。今年はさらに上積みする予定ですが、目下の心配は全国的にも影響が出そうな日照不足と低温です。
渡邊勲(55)さんは、息子の晃さんと一緒に二十五ヘクタールの水田を耕作する専業農家。「米価が年々、低下するなかで、価格を保障してくれるのはありがたい。その分、いい米をまじめに作らなければ」と気を引きしめます。
高橋晶一さん(54)は五・五ヘクタールの水稲と二十頭の黒毛和牛の複合経営を営んでいます。渡邊さんらは高橋さんに、牛の飼育場に敷くモミガラを供給するかたわら、完熟たい肥を引き取り、田んぼに施しています。
高橋さんにも、昌永(まさつね)さんという後継者がいます。「農業は地域産業です。稲作だけ、畜産だけというのでは成り立ちません」と言う渡邊さん。農民連の仲間は互いに支え合いながら、地域農業を守り、後継者を育てています。
心もつながる
「秋田の田んぼを思い描きながら『ぎょうざの満洲』のご飯を食べてほしい」と渡邊さん。秋田県農民連の佐藤長右衛門委員長も「『ぎょうざの満洲』さんとは、単にお米の取引というだけでなく、人と人とのつながりに変わってきた。気持ちのいい取引をさせてもらっている。こうしたつながりを広げながら、地域農業を支えてがんばる農民連の組合員を増やしていきたい」と語っています。
(新聞「農民」2006.8.14付)
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