「農民」記事データベース20060724-741-01

市民の力でいいものできました

「食と農の基本計画」

長野・須坂市

 市民参加の新しい農業のあり方を示した「食と農の基本計画」が五月、長野県須坂市でできました。市民の手で練り上げ市民の英知が結集している基本計画。農業振興と地域活性化への取り組みがスタートしました。


農業振興と地域活性化へ

100人委員会つくって議論

先進地視察や学習・交流も

 須坂市は、周りを山々に囲まれた扇状地。果樹栽培の適地で、ブドウ、リンゴの全国有数の産地です。ここ十数年来、農家数、耕地面積とも減少傾向にあり、後継者がいない農家が約半数を占め、高齢化も進んでいます。

 地元農民組合の会員も積極参加

 「須坂の農業を立て直したい」と永井光明市議(日本共産党)は、百五十人委員会を作り住民参加で農業振興政策を確立した高知県本山町を自ら視察し、二〇〇〇年に議会で取り上げました。

 これを機に、市内に「一〇〇人委員会」を作ろうという機運が高まり、市報などで委員を公募。応募者は百人には届かなかったものの、最終的に約八十人が委員に就任。農家をはじめ市民、主婦、商工業者など多彩で、地元の須高農民組合の会員も一〇〇人委員会に積極的に参加し、意見や提言を行ってきました。農業委員会も「議論に加わり、市民の声を聞き、提言したい」(当時農業委員の小林郁雄さん)と、一〇〇人委員会に積極的にかかわりました。

 「ふるさとづくり・次世代へ」「郷土食作り・ブランド作り」「安心して農業を続けるために」「安心・安全」の四グループに分かれ、二年以上にわたり、時には雑談、時にはけんけんがくがくの議論を繰り広げました。先進地視察も行い、学習を重ね、参加者同士の交流を深めました。

 自由な発想からうまいもん祭り

 郷土食作り・ブランド作りグループは、参加者の自由な発想の中から「食生活を見直し、郷土食を守ろう」の思いで一致し、「うまいもん祭り」の開催という形で結実しました。郷土食のほか、旬の農産物を現代風にアレンジしたケーキや菓子が並び、農産物の直売など市民の手による食と農の祭典です。〇四年から毎年、千人規模の参加で行われています。

 一〇〇人委員会は昨年、各グループの提言をまとめ、今年五月十日に待望の「基本計画」が策定されました。市産業振興部長の阪牧吉次さんは「形だけでなく名実ともに市民の力で作り上げたもの」と胸を張ります。

 「基本計画」は、市民の食と農への思いが込められた六つの目標から成り立っています。一つは、土づくり、減化学肥料、減農薬栽培を広く普及し、安全・安心な農産物の生産をめざします。

 二つ目は、生産された農産物は、消費者から信頼され、旬産旬消(賞)、地産地消(賞)の中で広く消費されることを目指します。農家の吉池宏美さんは「賞とは、農産物をよく味わい、賞賛してもらう意味が込められています」と説明します。

 三つ目に、農産物や農産加工品のブランド化が進み、付加価値の高い農業が行われること。伝統野菜の再生に力を入れる関野貞夫さんは、八町きゅうりの栽培に取り組み、新たなブランド作りをめざしています。

 四つ目は、グリーンツーリズムの推進。越信子さんは「畑に来てもらって、農業を理解してもらおう」と消費者との交流を楽しんでいます。

 五つ目には、認定農業者を中心に女性、兼業農家、退職者など多様な担い手によって農業が支えられるよう担い手の創出と育成をめざします。

 最後に、里山の遊歩道整備に取り組む田中定勝さんのように、ホタルやメダカを守って、水辺や里山の環境や景観の保全に努めます。

 早くも 「計画」 を実施

 五月に作成された「基本計画」ですが、早くも実施に。〇六年度新規事業として、新規就農しやすいように農地の貸借(取得)の下限面積を一律十アールに緩和しました。就農への意欲を高めるために市民農業大学校も開講しています。

 須坂では、国の「経営安定対策」が対象とする四ヘクタール以上の認定農業者、二十ヘクタール以上の集落営農に該当する農家はほとんどいません。須高農民組合の笹井修事務局長は「女性や兼業農家なども含めて多様な担い手が、消費者と手を結んで、ともに農業を楽しむことが大事」と力を込めます。

 基本計画策定に携わった各グループのなかには、そのまま残って活動しているものも。グリーンツーリズムを楽しむ越さんは「各グループの横のつながりを生かして、お互いに連絡しあえるネットワークを作り、考え始めた人から行動を」と呼びかけます。

 一〇〇人委員会の会長を務めた中村直江さんは「農業に限らず、商工業、観光業などすべての分野の人たちが、基本計画を検証しながら、議論を積み上げ、街の活性化につなげたい」と展望します。


ふるさとのよさ再発見できる機会

 三木正夫市長 「食と農の基本計画」の作成には、農家、消費者、流通業者など多くの人々が携わりました。作った人たちの思いが込められ、「自ら実践していこう」という計画です。

 今後「基本計画」に基づき、すでに産地化されているブドウやリンゴに加え、巨峰ワイン、シードル、ヤーコンジュースなど新たなブランド化を進めます。

 「信州すざか農業小学校」を昨年開校しました。子どもたちが農業、自然に親しむ場、地域の人たちとの触れ合う場を設け、農業振興、ふるさとのよさを再発見できる機会を作っています。


産地まるごと届けたい

米屋さんと生産者をつなぐ交流会

大阪会場
8月6日(日)午後2時〜(交流会)、5時半〜(懇親会)
会 場 交流会―大阪合同庁一号館第一別館会議室、懇親会―私学教育文化会館大会議室(地下鉄谷町線天満橋駅出口3番口から徒歩2分)
参加費 無料、ただし懇親会は3000円
申し込み 農民連近畿米ネット 電話06(6965)2900、3900 FAX06(6965)2901
東京会場
8月20日(日)午後2時〜(交流会)、4時半〜(懇親会)
会 場 東京・文京区民センター3階会議室(地下鉄三田線または大江戸線「春日駅」徒歩0分、地下鉄丸の内線「後楽園駅」徒歩5分)
参加費 無料、ただし懇親会は3000円
申し込み 農民連ふるさとネット 電話03(3590)1337

東京城南食糧(協)営業本部 電話03(3763)2226

(新聞「農民」2006.7.24付)
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2006年7月

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