「農民」記事データベース20060717-740-09

本の紹介

山本博史著「現代日本の農協問題」 
北出俊昭著「協同組合本来の農協へ」


時宜にかなった農協問題ブックレット

 この十月にJA全国大会が三年ぶりに開かれますが、現代の農協問題を考えるうえで、時宜にかなった二冊のブックレットが筑波書房から出版されました。

 ひとつは、農民連参与で前協同組合経営研究所常務理事の山本博史さんが書いた「現代日本の農協問題」。もう一つが、前明治大学教授の北出俊昭さんが書いた「協同組合本来の農協へ―農協改革の課題と方向」です。

 山本さんの「現代日本の農協問題」は、最近の三度にわたる農協法「改正」の問題点を掘り下げています。ひとつは、経営管理委員会制度の導入です。この制度によって、「組合員でもない、組合員から選ばれた人でもない農協のトップ」が生まれ、組合員自治が大きく後退させられていることを解明しています。もう一つは、信用事業のJAバンク化と経済事業の改革です。JAバンクの自主ルールによる強制的な早期是正措置や信用事業の統廃合が、協同組合金融とは相いれないことを明らかにし、協同組合とは何かをもう一度学ぶことの大事さを訴えています。

 一方、北出さんの「協同組合本来の農協へ―農協改革の課題と方向」は、官邸・財界の農協批判を取り上げ、その背景にある「協同組合の存在そのものの否定」を強く批判しています。そして、あらためて協同組合の原点に立ち返り、「はじめに経営ありき」から「協同組合の原則と価値の実現」への転換を呼びかけています。筆者の思いは、「農協人よ、窓を開けて協同組合の先駆者の息吹を今一度胸いっぱい吸おう!協同組合原則と価値の実現をめざした活動を強めることができるよう、最大限の努力をしよう!」という言葉に端的に表現されています。

(新聞「農民」2006.7.17付)
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2006年7月

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