「農民」記事データベース20060710-739-03

ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域会議

国際フォーラムでの各国代表の発言(要旨)〈5〉


飢餓増え、農村女性出稼ぎに

インドネシア農民組合連合事務局長 ヘンリー・サラギさん

 インドネシアは、一九九四年の経済危機を契機に、世界銀行、IMF(国際通貨基金)に支配され、同時にWTOに加盟しました。これが、インドネシアにおける新自由主義の始まりです。

 九七年に食糧調達庁が民営化され、食糧に対する国のコントロールは弱体化し、国営肥料公社も廃止されました。関税の削減によって外国から大量の農産物が輸入されるようになり、多国籍企業の活動も拡大しました。

 WTOは公共事業の自由化を要求し、インドネシアは水管理を民営化せざるをえませんでした。家事でも農作業でも水を使う権利が脅かされ、農民と水管理会社の対立が深刻になっています。

 WTO加盟によって、インドネシアは自国で生産できる基本的な食糧を輸入しなければならなくなりました。農業国であるインドネシアはもちろん、たくさんの農産物を輸出していますが、その多くはプランテーションで作られたパーム油やカカオ、ゴム、コーヒーなどです。同時にインドネシアは世界最大の食糧輸入国なのです。

 WTOや世界銀行、IMFなどによる支配のもとで、インドネシアの飢餓人口は増え続け、現在、五百万人が栄養不良の状態にあり、そのうち百五十万人は子どもです。農地のほとんどは、プランテーションを所有する大企業の手にあります。農村の女性は村を出て、香港や日本、韓国、中東諸国などで職を探すという傾向が強まっています。

 小規模農民の組織であるインドネシア農民組合連合(FSPI)は、農地改革の実施と食糧主権の確立を求めてたたかっています。このなかで私たちは、大企業が所有する百ヘクタールの土地を占拠し、農民の手に取り戻すことに成功しました。また、食糧主権を求める私たちのたたかいによって、政府は〇四年、米輸入を禁止すると宣言せざるをえませんでした。

 しかし、〇五年末、WTOとアメリカ政府はインドネシア政府に市場開放するよう大きな圧力をかけ、政府はこれに負けて再び米輸入を受け入れてしまいました。この経緯を見ても、一国の努力では食糧主権を確立できません。私たちは、連帯してたたかう必要があります。ありがとうございました。

(おわり)

(新聞「農民」2006.7.10付)
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2006年7月

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