全国食健連が緊急シンポ
安全な食、地域と農業守る
“もう一つの流れ”を共同で
小泉「改革」は何をもたらしたか
関連/農民との協働で地域と農業の発展
全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は六月十七日、東京・教育会館で、緊急シンポジウム「小泉『改革』は何をもたらしたか」を開催。参加者は、四人のパネラーの報告をもとに、食の安全と健康、地域と農業を守るために、「もうひとつの流れ」にむけた国民共同の取り組みを話し合いました。
長野県栄村の高橋彦芳村長は、「地域農政の自立と住民との協働」と題して発言。今の農政のもとでは、「山村の農業と暮らしの発展は望めない」と、村独自の「田直し」や「集落営農団体共同活動」、そして都市との交流を進めてきたことを紹介。行政と農家の協働で、地域農業と暮らしを守る高橋村長の気概とユニークな取り組みに、参加者は熱心に聞き入っていました。(別項)
選別は混乱と亀裂生み出すだけ
農民連の堂前貢副会長は、地元岩手での現地調査をもとに、集落営農づくりで全国の先進と言われている地域が、法人化するかどうか苦慮していることや「品目横断対策の対象になるために集落営農を立ち上げたのではない」と話していることなど、現状をつぶさに報告。「選別は農村に混乱と亀裂を生み出すだけ。すべての農家を対象に農業再建を共同で」と呼びかけました。
税関の現場で働く労働者でつくる税関行政研究会の宮応勝幸さんは、「小泉構造改革と輸入食料品の水際対策の問題点」について報告。アメリカ産牛肉の危険部位は、「たまたま発見できただけ」であり、「アメリカに屈すれば、水際で食い止められる保障はなにもない」と、アメリカ言いなりに規制緩和を進める政府の対応を批判しました。
医療現場から東京民主医療機関連合会の高村浩之さんは、医療制度改悪に反対して行った国会前での連日の座り込みや要請ハガキの取り組みを紹介しながら、車中での生活を余儀なくされたお年寄りや、病院にかかれない「患者難民」の実態を告発。地域の開業医などにも呼びかけて、「地域に根ざしたセーフティ・ネットをつくり、いのちと健康を支える医療をめざしたい」と述べました。
“心躍る取り組み”をみんなで
会場から、「学校給食に食材を提供している岩手の農家に、学校に来てもらって交流している」(全教・東京の栄養士さん)、「輸入の窓口になっている港湾では、テロ対策を口実にアメリカの税関職員が配置されるなど、主権の侵害が起こっている」(兵庫食健連・港湾労働者)など、活発な発言が相次ぎました。
全国食健連の坂口正明事務局長は、「高橋村長が“心躍る取り組み”と言っていたが、私たちも人と人との協同と連帯を通じて、そういう運動をみんなでつくっていきたい」と述べました。
長野県栄村・高橋彦芳村長の発言(要旨)
今年の冬は断続的な豪雪で、除雪する暇がなく、若者がいないお年寄りだけの世帯が苦労していました。こんな山村から、減反を推し進め、担い手を絞り込む「品目横断対策」などの農政を見ていると、とても農業と暮らしの発展は望めません。栄村では、行政と農民との協働による「田直し」や「集落営農団体共同活動」を独自に取り組み、地域農業を守ってきました。
田んぼを整備し8割近くが利用
「田直し」というのは、栄村版のほ場整備事業です。平場を基準に設計した国や県の補助事業では、経費ばかりがかかって棚田の農家には役に立ちません。村と農家が半分ずつ出し合って(十アールあたり四十万円以下)、十七年前から始めた事業です。千三百五十七枚あった田んぼを四百九十四枚に整備し、利用農家も五百戸を超え全戸の八割近くになりました。
「集落営農団体共同活動」は、政府の集落営農とは違います。一部の農家に任せるのではなく、地域の農林業を守り地域振興をめざす自由参加型の団体です。稲作の共同活動を軸に、ソバや野沢菜などの畑作目営農団体、林野を活用した山菜経営団体、女性を中心にした農産物加工組合など、いま九つの集落営農団体が活動しています。
資材活用に人材、都市との交流も
もう一つの柱は、都市との交流です。農家の空き家を借り上げて、交流の宿「ふるさとの家」を立ち上げて十年経ちました。いま、新自由主義=グローバル化のなかで、あらゆる面に格差が生まれています。国民は競争よりも、資源を人間的に活用した安定的な暮らしを望んでいます。山村には、資源は豊富にあるが科学技術や人材がない。そこで、大学を退職した農芸化学・有機化学系の先生などに呼びかけて、名誉研究員制度を作りました。十一人が応えてくれ、このうち三人に栄村の資源を使って環境にやさしいものを生み出してもらい、都市と農村の交流をさらに深められないか、と企画しているところです。
(新聞「農民」2006.7.3付)
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