農政「改革」法案の可決・成立に抗議する二〇〇六年六月十四日 農民連会長・佐々木健三
一、参議院は十四日、品目横断対策を盛り込んだ農政「改革」法案を自民、公明などの賛成多数で成立させた。民主、共産、社民各党は反対した。 農民連は、究極の農業破壊法というべき悪法を強行した政府と自民、公明に厳しく抗議する。 一、農政「改革」法案は、法案成立前から矛盾を深め、国会審議を通して事実上、破たんしている。中川昭一農水相は法案採決直前に「この対策は、実効性に未知の部分も少なくないことから、今後、その政策効果を検証し、必要に応じて適切な見直しを検討する」と述べ、この法案が欠陥法案だと認めた。欠陥法案の採択強行は、小泉内閣と自民党、公明党の無責任さと亡国ぶりを如実に示すものだ。 一、〇七年の開始をめざす品目横断的対策は、全農家を対象にした小麦、大豆などの価格保障を全廃し、要件を満たす大規模経営や集落営農組織だけに「経営安定対策」を実施するものである。 しかし、多数の農家が対象からはずされ、生産の継続が困難になれば、自給率の低下は必至だ。また、小麦、大豆の転作による生産調整機能が維持できず、米価暴落の引き金になりかねない。過疎化を加速させるなど、さらに農山村の困難を助長するものだ。 「対策」の対象になっても、関税を引き下げ、農民を安い輸入原価と競争させることが「対策」の前提であり、価格の下支えがなければ経営を維持できない。 一、品目横断的対策は、生産を刺激する政策が自由貿易の障害であるとするWTO協定を絶対視したものである。しかし、WTOは機能不全を深め、存在自体が危ぶまれている。政府は今こそ、WTOが推進する新自由主義の路線から脱却し、「食糧主権」に基づく世界の農業が共存する道に足を踏み出すべきである。 一、法案が成立したもとで、今後の地域農業と農民経営を守る取り組みがいよいよ重要である。 農民連は、政府に「対策」の中止と、がんばるすべての農家を対象にした価格保障政策や、地域の条件に合った多様な担い手を確保するための施策を要求する。同時に、地域農業を守るために懸命な自治体などと共同して品目横断的対策の要件緩和に全力をあげる。また、農家を生産から撤退させず、農地を守る地域ぐるみの取り組みを多様に発展させるために全力をあげるものである。
農政「改革」法案が成立農水大臣“欠陥法案だ”と自認参議院は十四日、本会議を開き、品目横断対策を盛り込んだ農政「改革」法案を自民、公明などの賛成多数で可決、成立しました。民主、共産、社民各党は反対しました。これに先立つ十三日には農水委員会で質疑・採決が行われました。農民連は、各地からかけつけた会員が朝から委員会を傍聴。委員会に所属するすべての国会議員に「法案を廃案にし、品目横断対策は中止すること。意欲あるすべての農家を対象に価格保障を実現すること」を要請しました。 日本共産党の紙智子議員は参院農水委員会で、「この法案で担い手を絞り込んだら、自給率は下がるのではないか。誰が責任をとるのか」と、きびしく追及しました。また、農地・水・環境対策の財源問題では、「地方自治体にも応分の負担(五〇%)を求めようとしているが、財源の乏しい地方に条件があるのか」と、政策の実効性に疑問を投げかけました。 中川昭一農水大臣は法案の採決直前に発言を求め、「この対策は、その実効性に未知の部分も少なくないことから、今後、その政策効果をしっかり検証し、必要に応じて適切な見直しを検討する」と述べ、この法案が欠陥法案だということを自ら認めました。 岡山県連の黒岡秀幸さんは、「審議を傍聴して、あらためて農民切り捨ての構造改革を許してはならないと思った」と話します。また千葉県連の小倉毅事務局長は、「大臣の“やる気のある農家、もうかる農業”というという答弁は口先だけだ。農家の怒りを束ねてはね返していきたい」と、決意を語っていました。
(新聞「農民」2006.6.26付)
|
[2006年6月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-22249
Copyright(c)1998-2006, 農民運動全国連合会