品目横断対策で地方公聴会北海道旭川市参院農水委員会
品目横断対策を盛り込んだ農政「改革」関連三法案を審議している参議院農水委員会は、六月六日、北海道旭川市で地方公聴会を開きました。出席した四人の公述人が口をそろえて、「この対策では北海道の農家経営の展望は開けない」「食料自給率は確実に下がる」と意見表明。あらためて、法案の問題点が浮かび上がりました。
農家経営は大変に、自給率下がる公述人全員 口をそろえて公述したのは、農民運動北海道連合会委員長の白石淳一さんのほか、北海道農業会議会長の藤野昭治さん、北海道大学名誉教授の太田原高昭さん、上川農民連盟書記長の高見一典さん。農民連の白石さんは、WTOが動き出してからの十一年間の問題点を図表で示しながら、品目横断対策の中止を要求。価格保障と直接支払いを組み合わせた経営支援策などの対案を示しました。(別項) 藤野さんは、「過去の実績に基づく支払いは農地流動化を阻害し、遊休農地を生み出す危険がある」と問題点を指摘。太田原さんは、「担い手の選別は、禍根を残す。担い手にはいろんな形態があり、もっと幅を広げるべきだ」と述べ、高見さんは「さらに離農に拍車をかける対策には反対だ。抜本見直しが必要」と話しました。 自民党議員が、「今度の対策は、国際ルールにどう対応するかという、待ったなしの課題。やる気の問題だ」と述べたのに対し、太田原さんは、「やる気と言われたが、やる気をそぐ農政を進めてきたではないか。それを転換する政策をとってもらいたい」と批判。白石さんは、「WTOはまだ決まっていないしどうなるか分からない。やる気という前にもっとき然とした交渉をすべきだ」と切り返しました。 (北海道農民連 野呂光夫)
白石淳一北海道農民連委員長の意見陳述(要旨)北海道農業・農村の現状と問題点ここ数年、生産者の手取り米価は一万円余で推移し、「こんな米価ではもう農業は続けられない」との声が渦巻いています。米価暴落の要因は、政府が米の管理から撤退し、価格を市場原理にゆだねた結果であり、毎年増え続けたミニマム・アクセス米が追い打ちをかけています。「米改革」も「経営所得安定対策」も、WTO体制を前提に進められてきましたが、WTO後の十一年間で増えたのは農産物の輸入と減反であり、下がったのは農産物の価格と農民の所得、そして食料自給率でした。 日本の稲作にとって、いま最も求められるのは、第一に歯止めのかからない米価の暴落対策、第二に国内の生産拡大を軸に国家的な事業として食料自給率の向上に取り組むこと、第三に戦後農政の柱としてきた家族経営の育成――です。 「品目横断対策」は以上の点に応えておらず、むしろ社会的要請に背を向けていると言わざるを得ません。私は「品目横断対策」に反対します。
「品目横断対策」の問題点「品目横断対策」は、生産現場で営農を進めるうえで矛盾があります。その一つは、「品目横断対策」は対象を、要件を満たした一部の「担い手」や集落営農に限定していますが、これでは従来の農村の集落機能が失われるだけでなく、多くの農家が経営を維持する「かて」を失い、離農を余儀なくされること。矛盾の二つ目は、支援の対象になったとしても、この対策の前提である関税の引き下げと輸入拡大のなかで、一切の価格の下支えがないままでは、経営安定の保障はどこにもないこと。三つ目は、この対策にある「諸外国との生産条件格差是正のための対策」(ゲタ)の主要部分が、「過去の生産実績による支払い」のため、生産拡大は事実上不可能な対策となっており、食料自給率向上に逆行するものだということです。
食料自給率を向上させ日本の食と農を守るために何が必要か食料自給率を向上させ、日本の食と農を守るために、「品目横断対策」は中止し、次の実現を強く求めます。第一に、WTOの農業交渉ではミニマム・アクセスの拡大につながる政府提案を撤回し、「よりいっそうの市場開放を許さない」というき然とした態度を貫くことです。WTOが矛盾を深め、交渉が事実上、暗礁に乗り上げているとき、「国際ルールはきびしくなる」などという結論を先取りした対応は行うべきではありません。 第二は、暴落している農産物価格に歯止めをかけ、生産を継続できるようにするために主要農産物の価格保障を復活・拡充することです。 第三は、「担い手減らし政策」をやめて、農業の継続を希望するすべての農家を施策の対象とすること。また、地域の条件を踏まえた助け合いによる多様な取り組みに、地域の自主性を尊重して支援することを強く求めます。 世界の飢餓が問題になっているときに、世界の人口のわずか二%の日本が、貿易に出回る食料の一〇%を買い占めています。「貿易よりも自給生産を優先する」という食糧主権の原則にもとづいて、国内で生産可能な農産物をできる限り自給することは、安全・安心な食を取り戻すうえで不可欠であると同時に、食料自給率を向上させることこそ世界への貢献だということを述べて、私の意見とします。
(新聞「農民」2006.6.19付)
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[2006年6月]
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