WTOから食糧主権へ
「WTOから食糧主権へ。たたかいを、そして希望をグローバル化しよう」――。農民連が昨年5月に加盟した世界的な農民組織、ビア・カンペシーナの東南・東アジア6カ国の代表が5月20日から1週間、来日しました。ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域の運動方針を練り上げるためですが、合わせて26日には東京で国際フォーラムを、農民連と共催(全国食健連と全労連「もうひとつの日本闘争本部が協賛)。全国から300人がかけつけ、WTOのもとで各国の農民が直面する困難を告発し、WTOに代わる対案として食糧主権の確立を訴えました。
私たちのたたかいを、希望をグローバル化しようビア・カンペシーナ国際フォーラム食糧作る農民が飢えにさらされフォーラムで報告したのは、インドネシア、韓国、フィリピン、タイ、ベトナム、東ティモール、日本の七カ国・八農民組織の代表。農民連の佐々木健三会長と全国食健連の坂口正明事務局長の歓迎あいさつに続いて、ヘンリー・サラギさん(インドネシア)=ビア・カンペシーナ国際調整委員会責任者=は、「食糧を生産する農民が世界中で飢餓に苦しんでいる。このフォーラムで、正義と平等、平和にもとづく真の連帯を深めよう」と、主催者あいさつしました。フォーラムで各国の代表が強調したのは、WTO以降の十一年間の農民の苦難、そしてアグリビジネスの横暴です。 「韓国では農家数が半分に減る一方、農家の抱える負債は二・五倍に増えた。農民は農村を捨て、都会に出て行かざるをえなくなり、農村のコミュニティーの崩壊が起こっている」(ユン・グンスンさん=韓国KWPA) 「インドネシアはWTOのもとでパーム油、カカオ、ゴムなどを輸出しているが、その一方で世界最大の米輸入国になった。私の国では五百万人が飢餓にあえぎ、そのうち百五十万人が子どもだ」(サラギさん) 「アグリビジネスが世界中を闊歩(かっぽ)している。タイ北部では日本企業が農民を安く雇い、米とキュウリを輸出して日本の農民にも打撃を与えている」(サワット・アパハさん=タイAoP) 「地主らが土地を支配するフィリピンでは二百六十万人が一日に一食しか食べることができない。世界の種子の八五%をわずか五社が支配し、遺伝子組み換え作物を農民に作らせ、伝統的な農法を続ける権利を踏みにじっている」(ウィルフレード・マーベラさん=フィリピンKMP) ――といった告発が相次ぎました。
WTO告発・批判と食糧主権の展望ハイム・タデオさん(フィリピン・パラゴス)は、「WTOは、こうした不平等を制度化し、貧富の格差をますます広げている」と指摘。「『WTOを農業から追い出す』という旗の下に、世界の農民が団結しよう」と呼びかけました。WTOの告発・批判とともに、その対案として食糧主権を確立する意義や展望について生き生き語られたのもフォーラムの特徴です。 「消費者は安全な食料を得る権利がある。農民は、土地や水、種子を手に入れ、自分たちのやり方で食料を供給する権利がある。私たちはこの権利(食糧主権)を取り戻したいのです」とユンさん。 また、サラギさんやマーベラさんは、多国籍企業や大地主が土地を支配する祖国で、食糧主権を確立するために必要な農地改革のたたかいを強調。長い植民地の歴史からようやく抜け出した東ティモールのエゴ・レモスさんは「農民が強くなれば、その国の文化や伝統も強くなる」と語り、新しい国づくりへの決意をみなぎらせました。 農民連の白石淳一副会長は、家族農業を解体し、日本企業のアジア進出を促進する小泉「農政改革」を厳しく批判。「食糧主権こそが、WTO・FTAと日本政府の追求する破滅的な方向に対する根本的な対案だ」と述べて、奮闘を誓いました。
憲法9条改悪に反対をよびかけフォーラムの最後にまとめをおこなったユンさんは、日本政府が憲法九条を改悪し、アジアを再び戦場にする道を開こうとしていることにふれ、「命を守るために、食糧主権を確立し、戦争に反対しよう。ともに手をつないで、最終的な勝利をかちとろう」と力強く呼びかけました。海外代表と一週間行動をともにした農民連の真嶋良孝副会長は「サラギさん、ユンさんに『農民連は昨年、ビア・カンペシーナ加盟を正式に認めてもらったが、まだお客さんだった。日本での会議やフォーラムを通じて、本当の友人になった気がする』と話したら、彼らもうなずいていました。農民連の組織や路線への理解も深まったと思う」と語っていました。
ビア・カンペシーナの来日メンバー (敬称略)【インドネシア】ヘンリー・サラギ=ビア・カンペシーナ国際調整委員会責任者、インドネシア農民組合連合(FSPI)事務局長、イルマ・ヤニー=ビア・カンペシーナ東南・東アジア事務局、通訳【韓国】ムン・キョンシク=韓国農民連合会(KPL)代表、ユン・グンスン=韓国女性農民連合(KWPA)委員長、ビア・カンペシーナ国際調整委員、キム・ビュンス=通訳 【フィリピン】ハイム・タデオ=パラゴス(PARAGOS)代表、ウィルフレード・マーベラ=フィリピン農民連合(KMP)、エヴァンジェリン・メンドーザ=フィリピン農村・農民自主組織全国連合会(UNORKA) 【タイ】サワット・アパハ=貧困者連合(AoP)、ソムサク・ヨインチャイ=北部農民連合リーダー、ポンティプ・サムランチ=通訳、メイケ・ゲッパート 【ベトナム】グェン・バン・ズン=ベトナム農民組合(VNFU)人事部長、グェン・スィ・ビェット・ハ=VNFU国際部、通訳 【東ティモール】エゴ・レモス=持続可能な農業推進ネットワーク(HASATIL)リーダー
インドネシアジャワ島地震農民連が義援金呼びかけインドネシアのジャワ島中部で二十七日、強い地震が発生。農民連は、来日中に祖国を災害に襲われたサラギさんに見舞金を渡しました。地震の被害は、死者が六千人に迫るなど甚大なものです。インドネシア農民組合連合はいち早く救援活動にとりくんでおり、農民連はアジアの友人への義援金を呼びかけています。 義援金の送り先=郵便総合口座一〇〇三〇‐六一六七一七一一「農民連災害対策本部」まで
(新聞「農民」2006.6.12付)
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[2006年6月]
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