全中が援護するWTO日本提案
ミニマム・アクセス米拡大の道開く
WTO交渉は、四月末のモダリティー確立を断念して以降、こう着状態が続いています。ラミーWTO事務局長は、「七月末までにやらなければ、WTOの信頼性が失われ、一、二年は止まってしまう」と危機感を募らせ、各国に譲歩を求めています。
* * *
追いつめられた状態
しかしWTOはギリギリまで追いつめられた状態。自由貿易主義をゴリ押しするWTOは、日本と世界の農業にとって百害あって一利なし。さらに追いつめ、息の根を止めることが重要です。
日本政府は、WTOに対して積極的に交渉の進展を働きかけています。中川農相は五月初めにラミー事務局長、ファルコナー農業交渉議長と相次いで会談。「六月中に大きな動きが必要との認識で一致」した、と報じられています。(「日本農業新聞」5月3日付)
政府が交渉の進展を促すのは、日本農業を犠牲にして途上国の鉱工業品市場を開放し、日本企業の海外進出をしやすくするため。ところが、農協中央は「日本提案の実現」をスローガンに掲げ、政府の動きを側面から援護しています。
農協中央が「実現」を唱える「日本提案」(日本が主導して作った、韓国、スイスなどG10諸国の提案)は、急進的な市場開放を求めるアメリカなどの提案とは違いますが、それでもミニマム・アクセス(MA)の拡大をはじめ日本農業に大きな影響を及ぼす内容です。
* * *
譲歩重ねてきた日本
「日本提案」を日本の米に当てはめれば、MA米は最大三五%拡大し、毎年百四万トンの米輸入を許容することに。これは、米生産一位と二位の新潟・北海道の合計に匹敵する数量です。また、MAの増加率を五%に抑える選択肢もありますが、これを選べば大幅な関税削減を強いられることになります。
しかも日本は、香港閣僚会議の前(昨年十月十日)と最中、そして四月十四日の三回提案を行っていますが、その度に譲歩を重ねてきました。今後、WTO交渉が進めばますます譲歩を迫られ、仮に合意に達することがあれば、その内容は、今の「日本提案」より悪くなることはあっても良くなることはないでしょう。
今年はまさに、多国籍企業や大国の利益を代弁するWTOが前進するか、それとも世界の民衆・農民の力でWTOに代わる「食糧主権」にもとづく新たなルールを築くか、剣が峰の年です。地域から共同を広げ、政府と農協中央の姿勢を変えることが重要です。
(新聞「農民」2006.6.5付)
|