異常気象と食糧生産
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―農業のはなし―
お茶の水女子大学名誉教授 内嶋 善兵衛
100年後に2〜4度も温暖化
「気候は変わらない」本当に?
学校の地学では、気候はある地域の多年の平均的な天気の集まりで、ほぼ一定で変化しないと教えています。本当にそうでしょうか? 年寄りの話を聞くまでもなく、二十〜三十年前に比べて「霜柱」や「薄氷」を目にする機会がめっきり少なくなりました。反面
、夏の暑さがひどくなり、真夏日や熱帯夜が多くなりました。
大都市ではヒートアイランド現象があるので、宮崎県都城盆地にある田園都市―都城での温度記録を図1に示します。年々大きく変動しながらも、最高・平均・最低気温の年平均値は次第に上昇しています。特に一九八〇年代半ばから上昇が顕著です。このように、田園都市でも温暖化が着実に進んでいます。同様な温暖化が全国的にも世界的にも気象観測や昆虫・花便りなどから報告されています。
近未来の気候を予想してみると
豊かな生活を目指して世界中の人々は一生懸命です。このため膨大な天然資源が湯水のように使われ、廃熱・廃ガス・廃棄物を山のように環境内に放出しています。特に化石燃料の使用による温室ガス放出量
は増加するばかりです。これでは地球は温室内のように高温になるかと心配です。
この心配を解くために、世界の気象学者は、精巧な気候モデルと超高速電算機を利用して近未来気候を予想し、図2のような結果
を得ています。化石燃料の使用予想で温暖化の程度も違いますが、五十年後には現在よりセ氏一〜一・五度、百年後には二〜四度も温暖化する可能性があるようです。
日本列島の値に換算すると、百年後には西日本で二度、東日本・北日本で三度、北海道東部で四度近く温暖化する可能性があります。多くの農林業は自然の営みと歩調を合わせて行われるので、予想される温暖化は農林業のすべて、そして人々の生活に大きな影響を与えるものと思われます。
(つづく)
(新聞「農民」2006.5.29付)
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