東南・東アジア地域
農業の現状と運動
=ベトナム・東ティモール=
工業化で都市・農村の格差広がる
飢餓と貧困が深刻な社会問題に
昨年のビア・カンペシーナ東南・東アジア地域会議でのベトナムと東ティモールの農民組織の発言から、両国の農業政策と農民運動を取り上げます。
〈ベトナム〉
全人口の八割、四千万人が農民というベトナム。政府は、一九八六年から経済自由化、工業化を目指し、スローガン「ドイモイ」(ベトナム語で刷新の意)を掲げ、積極的に市場開放と産業化を推進。近年、めざましい経済発展を遂げてきました。
今年は「ドイモイ」二十周年の節目の年。政府は、WTOが推進する市場開放、自由貿易が同国の工業化に大きく貢献すると信じ、昨年の香港WTO閣僚会議で検討され、決定されるはずだった加盟承認を強く求めています。
工業化が進む一方で農民の生活は貧しく、都市と農村の格差が広がっています。現在、農家一戸当たりの平均農地面積は〇・七ヘクタール。実際に農民が所有する農地は、国土の〇・四七%しかありません。
「農民に必要なのは、経営戦略と加工技術の向上、土壌改善などによって、生産物をもっと売ること。WTO加盟は、農民に困難な状況をもたらすが、同時に収入を増やすチャンスにもなる」という見解をもつベトナム農民組合連合(VNFU)。八百万人という会員を抱える同国最大の農民組織です。代表は、ニュイエン・ドゥク・トリエさんです。
〈東ティモール〉
東ティモールは、国土の大部分が中山間地という国。日本の四国とほぼ同じ大きさの島国です。四百年続いたポルトガルの植民地時代、その後の数度にわたるインドネシアの侵攻という受難の歴史を経て、二〇〇二年五月、やっと独立を勝ち取った世界で一番若い国です。
海外に巨額な負債があり、経済力も弱いため、政府は、同国に支援を行うアメリカを中心とした経済大国の意思に逆らえません。経済の海外依存度が高まり、東ティモールの農業の姿は一変しました。
食文化もイモ、バナナなどから米中心に変わり、タイやベトナムから大量の米が輸入されています。加えて、現金収入を得るため、コーヒーなどの換金作物が盛んに栽培されるようになりました。その結果、食料が不足し、貧しい農村地域で広がる飢餓と貧困が深刻な社会問題になっています。
持続可能な農業推進ネットワーク(HASATIL)は、自国で生産できる伝統的な作物を再び取り戻して、農民の生活を守るとともに、環境にやさしい持続可能な農業を進めるため、WTOや新自由主義に強く反対しています。代表のエゴ・レモスさんが今回の会議に参加します。
(新聞「農民」2006.5.22付)
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