「農民」記事データベース20060515-731-16

演劇

青年劇場「尺には尺を」

シェイクスピアの問題作


 青年劇場が劇団にとって十七年ぶりにシェイクスピア作品に挑みます。上演するのは「尺には尺を」(小田島雄志・訳、高瀬久雄・演出)。この作品は十七世紀の初頭の、ヨーロッパが混とんとしていた時代に書かれたもので、「喜劇」でも「悲劇」でもない問題作といわれています。最近では「子供のためのシェイクスピアカンパニー」(山崎清介演出)や「アカデミック・シェイクスピア・カンパニー」(彩乃木崇之演出)でも上演されるなど新たな注目を集めています。

 ウィーンの公爵・ヴィンセンシオは、自分の代理をアンジェロに任命し姿をかくします。アンジェロは法を厳しく適用し、姦淫罪(かんいんざい)で若い紳士・クローディオに死刑を宣告します。そこで、クローディオの妹・イザベラがアンジェロに兄への死刑宣言を取り消すように嘆願します。しかし、アンジェロの態度はイザベラをわがものにすることでした。

 タイトルは「早急には早急を、猶予には猶予を、類には類を、尺には尺をもって報いるのが不変の法の精神だ」という公爵のせりふからとられています。訳者の小田島雄志さんは「題名になった『尺には尺を』とは、人に与えた刑罰は自分にも、ということで、聖書にある『目には目を』と同じ意味です」(『気分はいつもシェイクスピア』から)と述べています。

 製作の福島明夫さんは「テレビの前で怒ったり、あきれたり、悲しんだり、毎日のニュースは決して健康によくありません。そして、生活を、職場を失うような流れがこの一連のことがらのなかでつくられていると思うと、やりきれなさを感じます。そんななかで上演するこのお芝居、四百年前に書かれた作品ではありますが、現代日本をどこか引き写したようなお芝居です。だれが正しいのか、だれが裁くのか、たがのはずれた社会に奔放な人びとが入り乱れ、はてさて大団円は? こんな時代だからこそ見ていただきたい一作です」といいます。

 出演は公爵・ヴィンセンシオに葛西和雄、アンジェロに清原達之、イザベラに大月ひろ美のほか井上昭子、島田静仁、吉村直ら多彩な顔ぶれです。

(鈴)

 *5月20日〜28日(22日休演)、東京・新宿南口・紀伊国屋サザンシアター。前売り4935円。連絡先=青年劇場Tel03(3352)7200

(新聞「農民」2006.5.15付)
ライン

2006年5月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-22249

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2006, 農民運動全国連合会