生乳減産問題を機に活発な討論北海道酪農の未来開こう道北・道東で集会酪農王国・北海道が今、大きく揺らいでいます。牛乳の過剰を理由に、汗水流して搾った生乳の廃棄や手塩にかけて育てた乳牛の淘汰(とうた)が、酪農家に押し付けられているからです。そんな中、「北海道酪農の未来をどう切り開くのか」――道北と道東で二つの集会が相次いで開かれました。
力合わせ酪農と地域経済守る第一歩に天北酪農民集会「生乳は蛇口のように調整できない」――稚内市に程近い豊富町で四月十九日、約四十人の酪農民や関係者が集まり、酪農民集会を開催。農民連天北地区協議会が主催したもので、地元・豊富農協の石川岳志組合長や農民連の佐々木健三会長もかけつけ、激励しました。昨年暮れから始まった生乳の減産。今年三月にはついに一万トンの廃棄に至りました。酪農家の間では「どうしてこんなことになったのか」「農協系統は増産を指導してきたではないか」という疑問、不信が渦巻いています。 石川組合長も「私たちの農協では生産が伸びていないのに、なぜ余るのか。ホクレンのやり方が手ぬるいとも思う。この集会でぜひ問題をはっきりさせてほしい」と要望。 佐々木会長は、乳製品の消費や輸入の実態を示して「スーパーは、もうけの少ない牛乳の売り場を縮小している。WTOに名を借りて輸入にメスを入れないことが要因だ」と指摘。「農民連は、行き詰まるWTOへの対案として、各国の食糧と農業を守る『食糧主権』を提案する」と述べました。 北海道農民連からは、生乳廃棄の要因と道内各地で起きている動き、今後の酪農のあり方について問題提起。マイペース酪農を実践する石沢元勝副委員長は「輸入拡大に反対しながら、輸入飼料に依存した経営でいいのか。マイペース酪農は農政に左右されない、牛も人間も健康第一のやり方だと思う」と自らの経緯とともに報告しました。 参加者からは「北海道の生産量を上回る輸入で乳業はもうけている」「消費拡大が大事だが乳製品の原産国表示がない」と、日ごろの疑問や悩みが矢継ぎ早に出され、活発な討論に。木村秀雄天北協議会議長は「減産と乳価の引き下げではやっていけない。今日の集会を、みなさんと力を合わせ、天北の酪農と地域経済を守る取り組みの第一歩にしたい」と訴えました。
マイペース酪農の実践、生きいき報告別海町酪農民交流会「私の酪農 いま・未来を語ろう」と題して開かれた交流会(二十三日、別海町)は、毎月開くマイペース酪農交流会の全体集会です。マイペース酪農は、規模拡大とは逆の発想で、地域の風土や乳牛の自然力に依拠した酪農経営のスタイル。その一年間の実践が、生き生きと語られました。道内各地の酪農家、研究者ら約百人が集まり、東京の消費者団体「よつ葉会」のメンバーも初参加。大島義徳実行委員長は「将来に向かって、日本にふさわしい酪農を展望しよう。釧路根室では草を十分に活用してこそ未来が開けると思う。牛を牛らしく飼うことで消費者に喜ばれる牛乳を生産したい」と語りました。 根釧農業試験場の西道由起子さんが、別海町の森高哲夫さん・さよ子さんの牧場で行った、飼料をすべて道内産に切り替える試みについて報告。続いて、新規就農した二組の家族が自らの経営をリアルに紹介しました。 中標津町の尾崎広太郎・孝子さんは「牛飼いも育児も私たちの生き方」だとして、五人の子育てに合わせた経営を紹介。「この十年間、頭数を変えず、牛のがんばりが家計を支えている。できればこのままで行きたい。子どもを健康に育てるには、野菜も牛乳も安全が第一だ」と述べました。 厚岸町の飯高勇一郎・素子さんは、全道平均を大きく下回る、搾乳牛三十頭の経営。「分相応の暮らしだが、時間はあるので、できるだけ手作りして経費を節約している。我が家のケチケチライフはホームページでどうぞ」と笑いを誘いました。 昼食は、地元の食材を使った手作りの料理と乳製品が所狭しと並び、参加者が報告の感想や日ごろ感じていることなどを大いに語り合いました。
(新聞「農民」2006.5.15付)
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[2006年5月]
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