多国籍企業の“海外進出”を促進
食料・農業・農村政策推進本部の
「21世紀新農政2006」
「東アジア食品産業共同体」を構想
日本の農業・食糧の危機的状況に拍車
政府の「食料・農業・農村政策推進本部」(小泉首相が本部長)は四月四日、「二十一世紀新農政二〇〇六」なる方針を決定しました。「もうこれ以上『農業鎖国』は続けられない」(〇三年十月)と言い放って農政改革断行の引き金を引いた小泉首相。同方針は、自民党総裁の任期切れ後を見越して、“小泉なき小泉改革”の布石を敷いたものです。
スピード感をもって推進と宣言
「二十一世紀新農政二〇〇六」は、(1)“食の買いあさり”の仕掛け人である多国籍企業の「海外進出」をさらに促進する「東アジア食品産業共同体構想」を提案。また、(2)すずめの涙ほどの日本産農産物の「輸出」と引き換えにWTO・FTA交渉での市場開放をいっそう進めること、(3)政府自身の計算でも販売農家の四分の三を首切る農業構造改革(品目横断的経営安定対策)を「スピード感をもって推進」すると宣言しています。
「東アジア食品産業共同体構想」は、「EPA(経済連携協定)推進戦略とも連携」し、「東アジア(中国、台湾、韓国、ASEAN六カ国)における我が国食品産業の現地法人の活動規模を五年で三〜五割上昇」させることが目標。今でも東アジアに進出した日本企業による開発輸入が日本農業を窮地に陥れ、アジアの農業を輸出に駆り立てて飢餓や貧困を広げていますが、これにいっそう拍車をかけるものです。
農業構造改革では、公共事業などでも品目横断対策の「担い手」を採択の要件にすることを検討するとして、予算・金融・税制のあらゆる面で九割の農家を切り捨てる差別・選別を徹底。その一方で「一般企業等の農業参入法人数を五年で三倍増」にする目標を掲げています。また、「民間の経験、有識者の知見を活かしたコスト縮減委員会(仮称)」の開催や全農改革などで「食料供給コストを五年で二割縮減」するとし、農山漁村振興では「地域ができることは地域に」と突き放したうえで競争による「活性化」を促しています。
「21世紀新農政」のうたい文句は
「二十一世紀新農政二〇〇六」のうたい文句は「守るところは守り、譲るところは譲る、攻めるところは攻める」ですが、実際には「守る」のはアジアと世界を股(また)にかけて利潤を追求する巨大企業の利益であり、「譲る」のは日本の食と農の市場開放であり、そして「攻め」たてられるのは農民と消費者です。
「もうこれ以上『農業開国』は続けられない」――これが日本の農民と農業関係者、消費者の差し迫った願いですが、こんな政策が強行されれば、日本の農業と食糧がさらに危機的な状況に追い込まれることは必至です。
(新聞「農民」2006.5.15付)
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