ポジティブリスト制導入にあたって農民連の見解と対応(案)
農民連は、五月二十九日から施行される残留農薬等のポジティブリスト制導入にあたって、「見解と対応(案)」を発表しました。その概要です。
ポジティブリスト制とは現在、国内で使用される約二百五十種類の農薬や動物医薬品、飼料添加物などには残留基準が定められ、基準以上のものは流通・販売禁止措置がとられています。一方、世界中で使用されている農薬等約八百種類のうち、残留基準が決められていない農薬等は、どんなに残留していようと流通がフリーパスです。そこで、「食品衛生法」を改正し、すべての農薬等を規制する「ポジティブリスト」を定めました。
ポジティブリスト制をめぐる問題点(1)小麦や大豆などの残留基準は、輸出国やコーデックスの基準に合わせて、より輸入しやすい基準に緩和されていること。たとえば小麦では、コーデックスの基準一〇ppmを採用。これは玄米の基準〇・一ppmの実に百倍。(2)すべての農薬に暫定基準を決めたため、日本で検査していない農薬や登録が失効した農薬が輸入農産物に残留していても、暫定基準以内あれば流通できること。 (3)暫定基準のない農薬に一律基準〇・〇一ppmを設定したこと。
生産現場で広がる不安と混乱耕地条件や作物の栽培体系、水田転作で果樹や野菜の作付けが混在しているもとでは、飛散(ドリフト)の可能性は当然予想されます。現場では、「これで飛散対策ができるのか」、「あとはすべて農家で対応しろと言うのか」など、不安と混乱が起こっています。
農民連の要求輸出国やコーデックスの基準に合わせて残留基準を著しく緩和する一方で、飛散など引き起こされる責任をすべて使用した農民に押し付けるポジティブリスト制を容認することはできません。農民連は、次の点を要求します。 (1)国内で使用されていない残留基準を、輸出国やコーデックスの基準をあてはめるのではなく、農薬取締法の登録基準に従って定めること。 (2)国内で使用されている農薬で、作物ごとに使用基準や残留基準がないものについては、速やかに使用実態や地域の生産状況を踏まえた基準を定めること。これが決まるまでポジティブリスト制の実施を凍結すること。 (3)地域の生産状況にあわせ、共通して使用できる農薬情報を自治体ごとに早急に作成すること。 (4)資材購入など飛散防止対策への補助制度を創設すること。 (5)登録失効農薬や有効期限切れ農薬の回収責任を、販売業者に義務付けること。
より安全な農産物の生産をめざして安全な農産物を生産して国民に提供することは、農民の使命です。同時に国は、農民の生産意欲を高め、食料自給率の向上に努める責任を負っています。しかし、JAS法による有機認証制度や農薬取締法、ポジティブリスト制の実施などで、農産物の安全確保の責任をすべて生産者に押し付けています。いま、ポジティブリスト制の実施を前に、日本水産やニチレイなどの食品企業は、中国で生産・加工する農産物について、ポジティブリスト制に対応した「安全」対策を進め、より安い原料調達を増やし、日本への輸出増加をねらっています。 農民連は、こうした実態を告発すると同時に、より安全な農産物を国民に届けるため、いっそう努力します。
ポジティブリスト制に対応できる機能を備えた食品分析センターの積極的な活用農民連食品分析センターは、ポジティブリスト制に対応できる「ガスクロマト質量スペクトル」を配備するため、広く国民に募金への協力を呼びかけています。(チラシ)「輸入しやすい基準」を告発するとともに、輸入農産物の残留農薬を徹底的に検査し、国民の安全を守ります。あわせて、生産者や加工・流通業者から求められる検査証明や飛散対策にも積極的にこたえることが可能となります。 農民連食品分析センターは、機能の強化・充実をはかり「国民の食料と健康を守る砦(とりで)」として、いっそう積極的な活動をすすめます。
(新聞「農民」2006.5.1付)
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[2006年5月]
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