東南・東アジア地域
農業の現状と運動
=マレーシア=
多国籍企業が農業の姿変える
“食は1つの人権”と農民組織
マレーシアは、マレー半島南部とボルネオ島北部の二つの領域を有する国。東マレーシア(ボルネオ島)の人口は、百四十万人。七割が伝統的な農業に従事し、主にコショウ、ゴム、ココアなどを輸出しています。
経済がそれほど発展していない段階でのWTO加盟。自由化の波のなかで、木材、石油、鉱物などのボルネオ島の豊かな天然資源をねらい、多くの多国籍企業が利権の獲得を競います。農地が奪われ、環境破壊が進み、農業だけでなく経済全体に深刻な状況をもたらしました。
東マレーシアの代表的な輸出農産物であるコショウ。一九九三〜九六年、白コショウが一キログラム当たり二十八リンギ(約九百四円)、黒コショウが十九リンギ(約六百十四円)と、過去最高価格を記録。しかし、九七年から、それぞれ九リンギ(約二百九十一円)、四リンギ(約百二十九円)と急落しました。この影響は、特に地方のコショウ市場を直撃し、七五%の生産者が農地を離れ、都市部に移り住むようになりました。
巨大なプランテーション経営で安い労働力として先住民を酷使する多国籍企業。伝統的に培われた持続可能な農業は、利潤性と効率性を中心にした農業に変わっていきました。食糧主権に含まれる自国の食料政策を決める権利が確立されていないため、政府は、農業、農民を守る道を選択しません。
「食を一つの人権として政府はとらえるべきである」。ボルネオ島のサラワク州で先住民の権利を守るため、一九八六年に結成された「ボルネオ先住民・農民運動」(PANGGAU)。主に、農地をめぐる運動に取り組んでいます。代表をラザリ・ボルヒさん、事務局長をアワン・アリさんが務めています。
(新聞「農民」2006.5.1付)
|