東南・東アジア地域
農業の現状と運動
=タ イ=
世界最大の米輸出国
自給的農業の姿が消える
世界最大の米輸出国、タイ。農産物貿易の自由化が自国の利益に結びつくと信じる政府は、一九九五年、WTO農業協定にサインし、米、大豆、砂糖など二十三品目の農産物の市場を開放。輸入割当方式によって国内消費量の三%の輸入が義務付けられるとともに、十年間で平均二四%の関税削減目標が設定されました。
農業の自由化は、人口の過半数、三千八百万人の農民の生活に大きな影響を与えます。安い輸入農産物と競争できない小農民に、政府は保護の手を差し伸べるのではなく、輸出と市場に向けた換金作物を生産するよう圧力をかけました。
政府のもくろみ通り、農産物の輸出額は、九五年の一兆二千六百億円から〇一年の二兆九百億円に増加。しかし、農民は、返済不可能なほどの負債を抱えるようになり、生活は苦しくなる一方です。多くの農家は、家庭内で消費する食料の半分を購入しなければならず、自給的な農業経済構造が地域から姿を消し始めています。
「小農民を保護して食の安全を守れ」「真の経済発展は、地域の持続可能な自給的農業を守ることから」と訴えるタイ貧困者連合(AOP)。「一国の富のために他国の農民を犠牲にするのは許されない」と輸出中心の貿易政策をとる政府の姿勢を非難します。
AOPは、パクナムダム建設計画に苦しむ地元住民を救う平和的解決を目指し、九五年十二月に結成。農民を中心として、工場労働者、都市の貧民、漁民、女性など広範な人々の権利を守るために活動しています。
五月の地域会議には、同組織からベラポン・ソパさんとポンティップ・サムランジットさんが参加を予定しています。
(新聞「農民」2006.4.17付)
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