「農民」記事データベース20060410-727-01

“健康飲料”とメーカー宣伝

糖分が多いスポーツドリンク
イオン飲料

飲ませすぎの親も

 「スポーツドリンクは糖分が多いって本当?」という質問が、読者から寄せられました。インターネットなどで調べてみると、炭酸飲料よりは少ないようだけれど、それでもかなり多そう。さっそく農民連食品分析センターで調べてもらうとともに、保健師さんに話を聞きました。


飲みすぎると糖尿病誘発?!

 食品分析センターで調べると…

 まずは、検体となるスポーツドリンク(イオン飲料)を手に入れるため、スーパーの売り場へ。目移りするほどたくさんの種類が売られています。ペットボトルの大きさも、五百ミリリットルから一リットル、一・五リットル、二リットルというビッグサイズまで。キャッチコピーは、スポーツ時に飲むというよりも、日常飲む「健康飲料」といった打ち出しが目立ちます。(「ダカラ」の「カラダ・バランス飲料」など)

スポーツドリンク(イオン飲料)の糖度分析結果 農民連食品分析センター

 分析してもらったのは六種類。分析に用いた糖度計は、検体に光を当て、屈折率で糖度を計ります。三回計測した平均値が表の値。最高は「ポカリスエット」の六・七%で五百ミリリットル中には三十三・五グラムも糖分が含まれていることが分かりました。

 実は、これと同じ値がペットボトルの成分表示にあります。ただし項目は「糖」ではなく「炭水化物」。他の検体も調べると「糖質」と表示されているのは「ダカラ」だけで、他はすべて「炭水化物○○グラム」という表示でした。

 栄養学的には、たしかに「炭水化物」と「糖質」はほぼ同義語。しかし、スポーツドリンクに使われるのは、デンプンなどの「多糖類」ではなく、ほとんどが「単糖類」(果糖、ブドウ糖など)や「二糖類」(砂糖など)。「糖質」と表示する方が、より正確です。

 また、糖度が比較的低かった「スーパーエッチツーオー」「レモンウォーター」「アクエリアス」「ダカラ」の原材料を見ると、甘みを補うため、人工甘味料のスクラロースが使われていました。

 スクラロースは、ノンカロリーなうえ、砂糖の六百倍も甘みがあるといわれ、使用量が近年急増。しかし、スクラロースはれっきとした有機塩素化合物で、動物実験で九例中四例の流産が発生するなど、安全性に疑問がもたれています。

 スティックシュガー11本分相当

 糖度が判明したところで、次に官能試験に挑戦。「ポカリスエット」と同じ濃度の砂糖水を作り、飲み比べてみます。

 まずは三十三・五グラムの砂糖を計量。十グラム、二十グラム、三十グラムと、デジタル計りに砂糖を載せていくと、あらためてその量にビックリ。それもそのはずで、これはスティックシュガー(三グラム)十一本分に相当。四人分の食事を作るにしても、これほど砂糖(大さじ六〜七杯分)を使う料理はまずないでしょう。それをスポーツドリンクは、わずか数分、数十秒で体内に流し込んでしまうのです。

 できあがった砂糖水はかなり甘いものになりました。飲み比べて気が付くのは、スポーツドリンクの口当たりのよさ。これは、スポーツドリンクの酸っぱさのため。でも、口に残る甘ったるさは砂糖水のそれと同じでした。つまりスポーツドリンクは、飲み終わると口がベタベタし、また飲みたくなる味なのです。

 スポーツドリンクは、一九八〇年代に登場。二〇〇四年の生産量は百四十万キロリットルで、果汁飲料(同百七十五万キロリットル)に迫る勢いです。スポーツドリンクで育った世代が親になり、“体にいいもの”と勘違いして、粉ミルクを溶くのに使う人までいるといわれます。

 しかし、食品分析センターの石黒昌孝所長は、こう警鐘を鳴らします。「スポーツドリンクは果汁などと違って、吸収をよくするよう成分を調整した合成飲料。血液中に速く糖が吸収され、血糖値の急上昇を招きます。とくに乳幼児には飲ませないほうがいいのです」。


3歳児50人中18人が潜血尿

 茨城県内の保健師、金子さないさん(53)の話 以前、八月の三歳児健診で、五十人中十八人が潜血尿だったことがあります。保護者の方に話を聞いていくと、子どもの飲み物が問題だと、だんだんわかってきました。

 血糖値を正常な状態に下げる働きをするホルモンがインスリンですが、日本人は欧米人に比べ、半分しか持っていないことがわかっています。ジュース類を飲むと血糖値が急上昇し、インスリンが浪費されてしまいます。これが将来の糖尿病につながってきます。

 戦後の五十年間で米の消費は半分に減り、糖尿病の患者数は三十倍になりました。米などの炭水化物はゆっくり分解・吸収され、インスリンの分泌もゆっくりです。ご飯をしっかり食べることが食生活の基本なのです。私は、甘いジュース類に「飲みすぎると糖尿病などの原因になります」と表示させるべきだと思います。

(新聞「農民」2006.4.10付)
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2006年4月

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