「農民」記事データベース20060327-725-03

米国で3頭目のBSE牛

香港でも骨付き肉混入発見

 アメリカで三頭目のBSE感染牛が三月十三日、確認されました。同日、香港では、輸入されたアメリカ産牛肉に輸入禁止の骨付き肉が混入。香港政府は、この牛肉を輸出したアメリカの食肉大手スイフト・ビーフ社の製品を輸入禁止にしました。「アメリカのBSE汚染は日本以上」ともいわれるなかで、あまりにお粗末な違反が繰り返されています。二月十七日から二十三日にかけて訪米調査した日本共産党の紙智子参院議員に話を聞きました。


訪米調査した日本共産党参院議員
紙 智子さんに聞く

 汚染度は日本の10倍ほども高い

 ―アメリカで三頭目のBSE牛が見つかりました。

 紙 アメリカのBSE感染牛の発見は驚くに値しません。食品安全委員会も、アメリカの汚染度(生体牛リスク)は日本と比べて、「悲観的には十倍程度高い可能性がある」と指摘していたのですから、検査数を増やせばもっと見つかるでしょう。

 アメリカは、と畜頭数のわずか一%程度しかBSE検査をしていません。この上さらに検査予算を減らそうとしています。これは、明らかに逆行だと思います。

 大手違反企業は日本向け輸出も

 ―香港でも輸入禁止の骨付き肉が見つかりました。日本と同様の違反が繰り返されたということでしょうか。

図 紙 そうですね。ただ違うのは、香港で違反したのはスイフト社という大手企業だということです。日本向けに牛肉を輸出できる指定も受けており、農水・厚労省が昨年十二月に査察し、「問題なし」としていました。これは、重大なことです。

 私は、訪米調査で手に入れたアメリカの食肉企業の違反記録の原本をもとに、三月八日の参院予算委員会で「常習的違反企業が日本向け牛肉輸出の指定を受けている。日本で起きた危険部位 の混入事件は、けっして例外的なケースではない。今まで違反を繰り返してきたものが、今後どう是正される保証があるのか」と追及しました。香港での事件は、私のこの指摘を裏付けるものです。

 再発防止対策は適切に行われず

 このBSE違反記録は、アメリカ農務省食品安全検査局(FSIS)の検査官が報告としてあげたもので、市民団体のパブリック・シチズンが情報公開請求し、八カ月かかって昨年八月に公開されました。BSEの特定危険部位(SRM)の除去にかかわる違反事例、千三十六件の内容が詳細に記載されています。予算委員会には、事前に入手した分について日本向けに指定されている五工場分を翻訳し、資料として提出しましたが、内容は「対策が違反の再発を防止するために適切に実施されておらず、非効率また不適切」などと指摘されているものもあり、とても生々しいものです。

 ところが、川崎厚労相も、中川農水相も、寺田食品安全委員長も、この違反記録をわずか二枚の概要でしか見ておらず、食品安全委員会プリオン専門調査会でも同様で、まったく議論されていませんでした。食品安全委員会の答申は、「データの質・量ともに不明な点が多いこと」などから、「BSEリスクの科学的同等性を評価することは困難」と結論づけていますが、政府は肝心な資料を委員会に提出していなかったのです。

(つづく)

(新聞「農民」2006.3.27付)
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2006年3月

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