「農民」記事データベース20060320-724-10

平和であればこそ…の気持ちで

「農林水産九条の会」呼びかけ人
滋賀県・朝日漁業協同組合長
杉本敏隆さん


 かけがえのない宝の湖・琵琶湖

 私は、琵琶湖で漁業を始めて三十年になります。毎朝三時に漁に出ます。琵琶湖はかけがえのない「宝の湖」です。その風景は一見すると以前と変わりませんが、固有種のイサザやふな寿し用のニゴロブナ、ホンモロコ、セタシジミなどの水揚げは激減しています。

 その原因は、ブラックバスなどの外来魚やカワウといった野鳥が魚の卵や稚魚を食べたりということもありますが、何よりも水質の悪化です。琵琶湖総合開発というゼネコン型の乱開発で、魚が産卵する貴重なヨシ原や浅瀬を埋め立て、周回道路を建設し、砂利採取をした結果です。

 さらに周辺の水田から直接流れ込む濁水も浅瀬を汚染しています。ほ場整備が始まる前は、農業排水を別の田んぼの用水として反復利用する「田越しかんがい」でした。排水はいくつもの田んぼを通過するうちに泥が沈殿し、琵琶湖を汚すことはありませんでした。しかし用水と排水が分離されたことで、大量の排水が琵琶湖に直接流すようになったのです。

 湖の汚染はもう個々人の力では

 琵琶湖の魚の中で唯一減少していないのが、アユです。アユは毎年、川にのぼって産卵するからです。大半の漁師がアユにたよって生計を立てています。湖産アユは「縄張り」の習性が強く、形もすぐれていることから、全国の河川で放流されました。しかし最近のアユは、冷水病を発病するなど弱体化しています。

 琵琶湖の汚染は、もう個々人の力ではどうすることもできないところまできています。多くの人たちにこの現実を知ってもらい、汚染の原因を明確にして実効ある再生策を求めたい。そして、固有種の魚が元気に泳ぎ回る湖に戻ることを願っています。

 国民投票法案をはねかえそう

 終戦前に生まれた、今は亡き兄は、中耳炎を患って耳が不自由でした。戦争のさなか、十分な医療が受けられなかったのです。今でも、平和であれば耳を治せただろうにと思う気持ちが、憲法九条を守る運動につながっています。

 三月十一日には、「九条の会」事務局長の小森陽一さんを呼んで、「湖北九条の会」(米原市、長浜市など琵琶湖北部の地域)を開きました。国民投票法案を国会に提出しようという動きもあります。みんなではね返していきましょう。


 プロフィル

 一九五二年生まれ、名古屋大学を卒業後、滋賀県湖北町の実家に戻って漁師となる。この間、滋賀県漁業協同組合連合会会長を務める。現在、朝日漁業協同組合組合長、琵琶湖海区漁業調整委員。

(新聞「農民」2006.3.20付)
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2006年3月

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