異常気象と食糧生産
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―農業のはなし―
お茶の水女子大学名誉教授 内嶋 善兵衛
異常気象とはなにか?
昔からあった異常気象
最近では毎年のように異常気象が日本や世界の各地で発生し、「異常気象」という言葉がテレビや新聞でいつも見られます。しかし、農業や生活の歴史をみると、冷夏、日照り、台風などによる大きな被害は古くから起きており、これらの記録を集めて一九四九年に「異常気象覚書」が日本で出されました。
しかし一般人が「異常気象」という言葉によく接するようになったのは、一九六〇年代以降です。世界の各地で何十年、何百年に一度という気象現象が起き、農業・交通・生活に大きな影響を与えるようになったのが引き金でした。
「異常気象」 とは
異常気象の決め方がバラバラでは国際比較ができないので、世界気象機関(WMO)は次のように定義しています。
(1)過去三十年間またはそれ以上の期間で、観測されなかったような片寄った気象現象
(2)市民生活や農林業などに大きな被害を与えるような気象現象(台風、大雨など)
三十年間は、気象の平均値の算出に使用されている期間(現在は一九七一〜二〇〇〇年)に合わせています。月平均気温の出現割合は、図の上半分のように分布し、プラスマイナス二σ(シグマ)以上の域の温度が大体三十年に一回現われます。それゆえ平均値から二σ以上離れた温度は、異常高温か異常低温ということになります(ここでσは標準偏差で、温度の変動の大小を示す数値)。
図の下半分は宮崎県都城市にある九州農試畑作部のデータから求めた七月気温の年次変化です。この場合、標準偏差はセ氏〇・八一度で、一九七六年は平均値(二五・九度)よりも一・八度も低くなり、異常低温が出現しました。
(つづく)
(新聞「農民」2006.1.30付)
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